地域主権、過半数が疑問視 首長アンケート

共同通信社と河北新報社など加盟新聞社の知事・市区町村長アンケートでは、民主党が最重要政策に位置付けた地域主権改革について過半数が「進展に期待できない」と回答した。めぼしい成果が見えず、失望感が広がっているといえる。目玉政策の一括交付金では、総額削減への警戒感が高まっており、年末に固まる制度内容によっては地方側の反発が噴出する可能性もある。
<政権への期待度>
 首長が改革の先行きに疑問符を付けた理由は「政府の推進体制が不十分」(475人)が最多で、これに次ぐ「首相の指導力不足」(150人)を大きく引き離した。各省庁の政務三役が官僚の意を受けたような権限維持や組織防衛の言動を繰り返していることが影響したようだ。
 「その他」とした首長81人からは「多様な主義主張の集合体で、方針が定まりにくい」(兵庫・市長)、「経験不足で幼稚」(奈良・町長)、「都市型政党で、地方の実情を理解していない」(鹿児島・町長)など民主党の体質や能力を厳しく問う意見も。
 一方、全体の47%は、民主党が政治主導を掲げたことや、世論の関心の高さなどを理由に「改革に期待できる」とした。ただ半信半疑の首長も多いようで「期待しているというより願っている」(埼玉・町長)と切実な声もあった。
<一括交付金>
 国が使途を定めた「ひも付き補助金」を廃止して導入する一括交付金には、使途の裁量が広がることから65%が期待感を示した。しかし「総額を削減するなら一括交付金を進めるべきではない」との意見も65%を占め、まずは歳入の確保を最優先にしなければならない綱渡りの地方財政運営を浮き彫りにしている。
 一括交付金の総額について、民主党の小沢一郎元代表は9月の党代表選で、不要な公共事業が減ることなどで補助金に比べて「3割減らせる」と発言。もともと同党は公約で、一括交付金を「無駄遣いをなくすための政策」の一つに位置付けており、同様の意見は政府内にも多い。
 このため回答でも、国・地方財政の三位一体改革で地方向けの支出が大幅に減った“悪夢”を指摘して「国の財源調達手段にならないか懸念している」(福岡・町長)、「急な支給総額の減少があれば、行財政運営に行き詰まる」(愛知・市長)と政府をけん制する首長が多数いた。
<出先機関改革>
 一括交付金と並ぶ看板政策の国の出先機関改革では、「すべて廃止」「大半を廃止」「一部のみ廃止」の合計が77%に上った。「現状のまま」は13%だけで、首長側も国と自治体の二重行政解消の必要性を感じているようだ。
 政府が見直し対象とした8府省13機関のうち、優先的に業務を自治体に移し、廃止・縮小すべきだとした機関は、ハローワークを所管する都道府県労働局(24%)がトップで、地方農政局(21%)、北海道開発局(20%)などが続いた。
 省庁にとって、地方に影響力を持つ“前線基地”を失うことは権限の縮小そのものであり、一貫して消極姿勢。しかし業務の受け皿となる都道府県で87%、政令指定都市では全市が出先機関廃止を求めており、残るは政権の決断だけだ。

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