東日本大震災で打撃を受けた観光産業復活の方策を探ろうと、大崎市は1月26日、「クルーズトレイン『ななつ星in九州』を通じて地域活性化を考える」と題する講演会を市三本木総合支所で開いた。
講師はJR九州顧問の後藤靖子さん。「JR東日本などに比べて会社の規模が小さいJR九州は、高速・大量輸送よりも旅の楽しさを提示する方向に活路を求めた」と切り出した。
阿蘇の景観を満喫できる特急「あそぼーい!」、リゾート特急「ゆふいんの森」など特徴的な車両を投入。観光列車の集大成として13年10月に運行を始めた「ななつ星in九州」は「絶対に採算割れを起こす」との予測を覆し、予約が困難なほどの人気を博している。
この成功について後藤さんは、有田焼のちょうず鉢や大川組子の壁面装飾、薩摩切り子の食器を導入するなど、九州の総力を挙げて車両を製作したのが一因と分 析。また「ホテルや航空業界から採用した気鋭のクルーが、おもてなしの在り方など新しい旅の価値観を創造した」と胸を張った。
今後の課題に「国外からのさらなる誘客」を挙げた後藤さん。九州を訪れた外国人は、桜島などの活火山が市民生活の近くにあることに驚くという。「相手国が違えばセールスの方法も変わる。頑張る価値はある」と聴衆約150人に訴えた。
旧運輸省出身の後藤さんは九州運輸局企画部長などを歴任し、05年10月~08年7月に山形県副知事を務めた。