地方のTV局がバタバタ潰れる

●迷走するテレビ経営と報道姿勢
 テレビ業界がマッ青になっている。首相交代による政局混乱の影響で、地方局の経営支援策などを盛り込んだ放送法等改正案が廃案の危機に直面しているためだ。日本民間放送連盟(民放連)は7日に「今国会での成立を強く求める」との声明を出した。鳩山前政権を追い詰め、政局を混乱させた張本人はテレビメディアのくせに勝手なものだ。とはいえ、この法案が通らないと、地方局は本当にヤバイらしい。
 審議中の改正案は、在京キー局の地方局への出資上限を現在の「20%未満」から「3分の1未満」に緩和する規定や、地上デジタル放送の設備設置を進めるテレビ局の法人税や固定資産税を軽減する規定などが含まれている。仮に廃案になれば、すでに地デジ対策と広告収入減でフラフラの地方局の経営は大ピンチだ。
「民放連の調べでは、08年度の中間決算で、テレビ事業者127社のうち55社が赤字。『放送設備を持つ不動産会社』と揶揄(やゆ)されている在京キー局はともかく、不況の影響をモロに受けている地方局は経営がかなり厳しい状況です」(放送ジャーナリスト)
 改正法が成立すれば、キー局は系列局の出資比率を引き上げて救済するハラだった。その計算が完全に狂ったのである。
 この法案は、鬼っ子のような改正案だ。
「改正案の中に電波監理審議会の権限強化が盛り込まれていたことに対し、テレビが『番組への政治介入』と噛み付く問題もありました。しかし、法案が通らないと困るという。テレビ業界は身勝手でいいかげんです」(総務省事情通)
 民主党のある国会議員がこう言う。
「今年4月に党議連で『情報通信八策』というマニフェストを作成しました。その中に電波の有効利用のためのオークション制度が盛り込まれたのですが、テレビは自分たちの権益を侵すので大反対。この部分は一切報道されなかった。系列局が厳しいなら、キー局社員の給料を下げればいい。テレビ局はあまりにもご都合主義です」
 テレビの迷走ぶりは目に余る。
(日刊ゲンダイ2010年6月9日掲載)

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