地産「都」消進む 気仙沼の水産物を東京・墨田で 2信金連携、橋渡し

気仙沼信用金庫(宮城県気仙沼市)は東京東信金(東京都墨田区)と連携し、気仙沼産メカジキやサメの都内での消費拡大を目指す「地産都消プロジェクト」に取り組んでいる。互いの取引先を結び付け、協力して販路を切り開いてきた。東日本大震災の復興支援で手を携えた両信金は「さらに協力を深め、気仙沼を活性化させたい」と展望する。

■「輸入物と違う」

 7月下旬から8月にかけて、墨田区の飲食店や居酒屋7店のメニューに、気仙沼漁港で水揚げされたメカジキの料理が加わった。ドライカレーに陶板焼き、ムニエル、フライ。どれも各店オリジナルの一品だ。
 「洋食50BAN」は自家製バターソースを使ったソテーを出した。オーナーの川口俊幸さん(71)は「新鮮で形崩れせず、輸入物とは全然違う。お客さんに『ご飯が進む』と絶賛してもらえた」と喜んだ。
 都内の飲食店と気仙沼の水産加工業者をつないだのが二つの信金だ。東京東信金の吉田誠常務理事は「墨田区を気仙沼のメカジキが食べられる街にしたい」と意気込む。
 両信金の交流は2012年、気仙沼信金が用意した被災事業者の商品セットを東京東信金が大量購入したことを機に、16年の業務提携に発展。気仙沼にサテライトキャンパスを置く東京海洋大も交え、地産都消の推進会議を設置した。今も毎月のテレビ会議を続ける。
 メカジキは気仙沼が水揚げ量日本一を誇るが、都内での知名度は低い。両信金はまず墨田区で試食会を開催。気仙沼での商談会に東京東信金の取引先を招待し、墨田区のまつりに気仙沼の水産事業者が参加するなど、交流を重ねた。

■食材 鮮度アップ

 17年には、第一ホテル両国(墨田区)がフェアの食材に気仙沼産のメカジキやタコを採用した。運萬絵梨子支配人は「業者と直接交渉して新鮮な食材を出せるようになった」と歓迎。納入する足利本店(気仙沼市)の足利宗洋社長は「信金が動いてくれて、自力では難しい販売先の開拓につながった」と評価する。
 7店によるメカジキの共同提供に当たっては、足利本店が新メニュー開発用に1キロ、提供用に5キロを各店に無償で送った。数店が継続的な取引を検討しており、滑り出しは上々。取引定着のため、今後は仕入れ日の集中化による物流コストの抑制を模索する。
 気仙沼信金の藤村栄治復興支援部長は「メカジキやサメを旬ごとに面的に展開させたい」と思い描く。
 区内21園の給食でメカジキのコロッケ「メカコロ」を提供するなど、将来を見据えた食育の事業も進む。東京東信金の中田清史理事長は「復興を支える気持ちで取り組んできた」と強調。気仙沼信金の菅原務理事長は「協力関係をさらに深め、交流人口の拡大につなげたい」と力を込める。

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