基地利権に巣くう霞が関の役人たち

 なぜ、沖縄から米軍基地をなくせないのか。大マスコミはちっとも報じないが、そこには大きな利権が存在する。政府は基地と引き換えに、巨額の振興開発予算をつけてきて、そこに政治家や土建業者が群がり、税金を食い物にしてきた構図があるのだ。こうして、利権にありついてきた連中の中には役人もいる。ここにも基地問題が動かない本質がある。
 沖縄振興開発金融公庫――。本土ではなじみの薄い名前だが、那覇市の新都心にデンと本店を構える財務省所管の特殊法人・政策金融機関である。業務範囲は幅広い。本土における日本政策金融公庫、住宅金融支援機構、福祉医療機構に相当する業務を一元的に扱う。メガバンクが1支店しか存在しない沖縄にとって、最大の金融機関なのだ。
 ここに巣くってきたのが財務省だ。以下の表の通り、過去20年以上も理事長ポストには、財務省OBが座ってきた。その年収は数ある天下り法人でもトップクラスで、JICAの緒方貞子理事長と同額の約2100万円だ。沖縄県民の平均年収は本土の7割程度。県民が薄給にあえぐ中、大層なご身分である。
「沖縄公庫の大きな役目は、自民党政権が基地問題の見返りに、国の税金をジャブジャブ注いで、利権化した『沖縄振興開発事業費』の受注先への融資です。本土復帰の1972年度から2008年度にかけて国が投じた事業費の総額は約8.5兆円にも上ります。この間の沖縄公庫の出融資実績は、約5.3兆円です。自民党政治家が沖縄に予算を付け、沖縄公庫が業者にカネを貸し付ける。自民党政権とは車の両輪のような関係で、利権に食い込み続けたのです」(沖縄政界関係者)
 米軍が駐留地の一部を返還するたびに、再開発と称した“箱モノ”建設が進んだが、多くは景気対策にもならず失敗している。公庫はこうした融資を独占してきた。99年からの10年間の融資実績は約330億円、総工費の実に51.9%を占めた。その原資には、国の沖縄関連予算も含まれる。過去10年間に「補給金」として、総額438億円の援助を受けてきたのだ。
「問題は、沖縄公庫だけではありません。歴代の自民党政権が、新たな基地負担の見返りに沖縄に予算を付けるたび、関連する天下り団体が乱立した。01年に、当時の沖縄担当相だった尾身幸次前衆院議員が『沖縄新大学院大学構想』を発表。05年度から大学設立に向けた予算が付くと、早速、関連する独立行政法人が立ち上がり、沖縄開発庁出身で幾多の天下り先を渡ってきた官僚OBが、監事に納まりました」(前出の関係者)
 沖縄に基地が固定化すれば未来永劫、“見返り予算”と天下りポストも付いてくる。沖縄を食い物にする連中にすれば、その方が都合がいい――。沖縄から基地が消えない元凶が見えてくる。
【歴代の沖縄公庫理事長】
◇名前/任期/最終官職/入省
◆ 藤仲 貞一/86年11月~93年6月/沖縄開発事務次官/52年大蔵省
◆塚越 則男/93年6月~99年5月/沖縄開発事務次官/56年大蔵省
◆八木橋惇夫/99年5月~05年5月/環境事務次官/61年大蔵省
◆金井 照久/05年5月~現在/財務省会計センター所長/72年大蔵省
(日刊ゲンダイ2010年5月21日掲載)

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