基準地価 被災地が高い移転需要

18日発表の基準地価(7月1日現在)で、東日本大震災で打撃を受けた岩手、宮城、福島3県の沿岸自治体が、住宅地の上昇率全国トップ10の8位までを占めた。石巻市鹿又が伸び率16.8%で全国最高となったほか、福島第1原発事故の避難者が集中するいわき市も5地点が入った。宮城県利府町神谷沢が5位、釜石市平田が8位とトップ10入り。被災者の移転需要は引き続き高く、利便性の良い既存住宅地での値上がりが目立つ。
<石 巻>
 石巻市鹿又の8月現在の住民は4563人で、震災前から15.6%増えた。津波で浸水した市内の雄勝町、北上町から移住する例が多いという。
 地元町内会長の女川清一さん(70)は「震災前は人が減り、地価は下落する一方だった」と目を丸くする。
 鹿又地区は津波被害を免れた上、商業施設が集中する蛇田地区、三陸自動車道インターに近い好立地。震災後に地価上昇が続いていた新興住宅地に比べ、値ごろ感があるとされる。
 みなし仮設住宅から移り住んだ会社員木村剛さん(34)は「息子が2人いるので、近くに小学校があるのが決め手になった」と話す。
<いわき>
 避難者2万4000人が暮らすいわき市では久世原、明治両団地がそれぞれ全国2、3位の伸びを示した。ともに市街地にほど近い高台にあり、1970年代ごろに開発された点で共通する。
 市内の不動産鑑定士吉村英博さん(60)によると、二つの団地では、土地付きの中古物件の高値取引が多い。この場合、古い建屋は低い評価額になるため、土地の鑑定額が相場を上回る傾向にあるという。
 吉村さんは「蓄えがあった避難者は、比較的早い時期に新興住宅地に新居購入している。最近の宅地ニーズは、東京電力からの賠償金が原資になっているようだ」と分析している。

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