基準地価 警戒したい都心のミニバブル

日本経済の持続的な成長には、実需に基づいた緩やかな地価の上昇が好ましい。

国土交通省が発表した7月1日の基準地価は、東京、大阪、名古屋の3大都市圏で、住宅地が2年連続、商業地は3年連続上昇した。

全国平均では下落が続いているが、下げ幅は2008年のリーマン・ショック後で最小だった。

好調な企業業績を追い風に、オフィス需要が伸びている。低金利や住宅ローン減税が住宅販売を下支えしたことも、都市部の地価を上向かせた要因だ。

地価は、経済の活力を示す目安となる。不動産価格の上昇が、消費や設備投資を刺激する資産効果に期待したい。

利便性の高い都心部や、東京五輪の会場となる臨海部では、高額マンションの販売が好調で、地価も上がっている。

円安によって日本の不動産の割安感が強まり、中国など海外から多額の投資資金が流入している。局地的に「ミニバブル」のような動きも見られるという。

一方で、中国景気の減速や世界的な株安によって海外マネーが流出に転じ、不動産市況が冷え込む懸念も拭えない。

国交省は、投機的な思惑で地価が乱高下する兆しはないか、警戒を強める必要がある。

地価の安定的な回復には、不動産取引の活性化を促す政策対応も求められる。

容積率緩和などの規制改革によって、大規模な再開発を後押しする。法人税実効税率を早期に20%台に引き下げ、企業の投資意欲を高める。こうした取り組みを、政府は着実に推進するべきだ。

気がかりなのは、地方圏で地価の二極化が、一段と顕著になってきたことである。

札幌、仙台、広島、福岡の中枢4都市は、調査地点の約7割が上昇した。これに対し、4都市以外の地方圏は、上昇地点が1割にも満たなかった。

観光など地場産業の振興や充実した子育て支援策によって、地価下落に歯止めをかけた自治体も少なくない。各地域の知恵と工夫が問われている。

住宅地上昇率の全国上位10か所のうち8地点が、福島県いわき市内だった。福島第一原発事故の避難者が地元への帰還を諦め、いわき市に住宅を新築する動きが強まったためという。

地価急騰で被災者の生活再建が妨げられないよう、政府はしっかり目配りしなければならない。

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