国土交通省が18日発表した7月1日現在の都道府県地価(基準地価)の調査結果で、東北6県の平均地価は住宅地で1.3%、商業地で2.1%下落した。東日本大震災からの復興需要が続く宮城は住宅地、商業地ともに2年連続で上昇し、福島の住宅地は19年ぶりに1.0%のプラスに転じた。
6県と仙台市の平均地価と変動率は表の通り。宮城の住宅地と商業地の上昇率は2013年よりも広がり、東京に次いで高い。石巻市鹿又の住宅地が16.7%と全国一の上昇率を記録した一方、防災集団移転事業が進み、上昇基調が弱くなった市町村も目立った。被災地からの人口流入が続く仙台が、県全体の数値を押し上げた。
福島の住宅地は、移転需要の強いいわき市が5.7%上昇し、19年ぶりのプラスとなった。住宅地の上昇率の全国上位10地点のうち、5地点を同市が占める。
岩手と山形は住宅地、商業地とも下落幅が縮小したが、全国平均(住宅地マイナス1.2%、商業地マイナス1.1%)より幅は大きかった。
一方で秋田の住宅地、商業地の下落率は前年に引き続き全国で最大だった。青森も秋田に次いで全国で2番目に大きい下落率となった。
仙台市以外の県庁所在地では、福島市の住宅地が2.5%、商業地が0.3%でプラス転換。下げ幅が縮小した山形の住宅地は横ばい、盛岡の住宅地は0.4%のマイナスとなった。
[基準地価]国土利用計画法に基づき、都道府県が7月1日時点で調べる基準地の価格。今回の対象は2万1740地点。うち福島県の31地点は福島第1原発事故の影響で調査できなかった。不動産鑑定士らが、周辺の取引事例などから1平方メートル当たりの価格を算定しており、一般の土地取引や固定資産税評価の目安になる。国交省が毎年1月1日時点で調査する「公示地価」とは補完関係にある。
◎再建進み復興特需一服感
【解説】国土交通省が18日発表した基準地価は、宮城が2年連続のプラスとなり、けん引役の仙台市は三大都市圏を上回る上昇率を示した。地価は景気動向の重要指標だが、被災地での高騰要因は復興特需であり、単純に好況を反映したとは言えない。住宅再建の基盤整備が進み、高騰にも一服感が出てきた。
仙台市は、復興に時間がかかっている被災地などからの人口流入が続き、上昇率の拡大が続く。
東日本大震災後の窮迫した住宅需要を背景に、2012年ごろから先行的な投資の動きも目立った。「景気の実勢を超えバブルの様相。一部の投資家は潤うが、住宅供給や開発には悪影響」(仙台市の不動産業者)と過熱ぶりへの懸念は根強い。
特需後をにらんだ動きもある。信用調査会社幹部は「移転需要以外に景気を押し上げる力強さがない。特需は今年がピークとみる業者も多く、宅地開発計画を縮小する動きがある」と明かす。
仙台市以外の沿岸部では上昇傾向が弱まっている。国交省地価調査課は「集団移転地の造成に一定のめどがつき、被災地の急激な高騰は落ち着きつつある」と分析する。
東北では、震災の影響が少ない秋田と青森の下落率が全国ワースト1位、2位となった。復興需要による東北の被災地の地価上昇は自力回復が顕著な三大都市圏とは異質のもの。特需後の地価動向は不透明だ。(東京支社・中村洋介)