現在公開中の映画『闇金ウシジマくん Part3』 に登場する「誰でも稼げるようになる」との怪しげなセミナーを主宰する小太りの男……。この人物のモデルと噂されているのが、かつて“ネオヒルズ族”として注目を集めたシンガポール在住の実業家・与沢翼氏だ。当時はその成功体験がメディアを大きく賑わせていたが、その後は資金繰りに苦しみ、一気に転落したとも伝えられている。こうした与沢氏の浮き沈みについて、元祖“ヒルズ族”と呼ばれた堀江貴文氏は以下のように分析している。
「彼が展開したのは、カネを儲けるノウハウを売って儲けるという『プロダクトローンチ』と呼ばれる商法の一つ。目先の欲に目が眩んでいる人たちからカネを巻き上げる手口としてはまあまあ効率的で、あれはあれで画期的だった。だが、肝心なところで自分自身が目先の欲に目が眩み、見切りのタイミングを完全に逃して破滅したのではないでしょうか」(以下、「」内は堀江氏)
与沢氏の当時の住まいは六本木ヒルズで、高級外車も多数所有。その豪勢な暮らしぶりをたびたびメディアでアピールし、「秒速で1億円を稼ぐ男」と持てはやされた。与沢氏が展開したビジネスの正体について、堀江氏は新著『ウシジマくんvs.ホリエモン 人生はカネじゃない!』の中で詳しく説き明かしているが、たびたび対談のオファーも受けていたという。
「彼自身は『堀江貴文の影響を受けている』と公言していたが、私は彼に全く興味を持てなかった。一方的に尊敬されているらしいのは伝わっていたが、マスコミに『与沢さんは堀江さんの後継者ですね』と言われるのは本当に不愉快だった。彼のやっていたビジネスの先に私はいない。よく誤解されるが、私はカネ儲けを目的に仕事したことは一度もないからだ」
堀江氏もかつて六本木ヒルズに住み、“ヒルズ族”と呼ばれたが、メディアにはTシャツにジーンズ姿で登場。カネ持ちぶりをアピールすることはなく、ヒルズに住んだのは「職場に近く、時間と体力の節約のためだった」と振り返る。ビジネスとして成立させるため儲ける努力はしたが、カネ儲けを目的に働いたことは一度もないと断言できるという。
「私はカネ儲け自体を否定しているわけではない。カネを得ることの意義をしっかり見据えて働いてほしいだけだ。ラクして稼げるビジネスほどつまらないものはない。私も多くの事業を手掛けているが、稼ぎのいい事業はやはり苦労も手間もかかっている。苦労と手間を投じた事業がガンガン稼げるようになると、これほど面白いものはない」
堀江氏はここ数年、違う意味でカネに狂う「与沢翼氏的な若者」がまた増えていると実感している。だが、「何の苦労もせずに儲けられる仕事はないし、仮に儲けられたとしても、充実感を得られることはないだろう」と補足する。ビジネスとしての成功を長続きさせるためには、「やりたいことをやること」が肝心なのだという。
◆堀江貴文(ほりえ・たかふみ)
1972年、福岡県生まれ。実業家。SNS media&consulting株式会社ファウンダー。ライブドア元代表取締役CEO。東京大学在学中の1996年起業。以後、プロ野球参入やニッポン放送の買収表明、総選挙立候補など次々と脚光を浴びる。現在は、自身が手がけるロケットエンジン開発など様々な事業で幅広く活躍。最新刊『ウシジマくんvs.ホリエモン 人生はカネじゃない!』は発売1週間で大増刷。