堀江貴文氏が警鐘を鳴らす「ネオラッダイト運動」とは?

最近では手数料の高さを理由に、クレジットカードなどキャッシュレス決済を導入しようとしない飲食店主との「ツイッター上のやりとり」が話題になった堀江貴文氏(47)。発売即増刷となった最新刊『雇用大崩壊~マンガある若手技術者の会社を変える挑戦~』の中では、劇的に進化していく様々なテクノロジーと、人々がどう向き合うべきかについて論考している。堀江氏が飲食店主とのやりとりを繰り返した真意とは?

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 テクノロジーの進化を受け入れず、怯えている勢力は、いつの時代も頑固に存在する。19世紀初頭、イギリスから発祥した産業革命は、世界初のテクノロジー革命だった。工場への大型機械の導入により、製造業は大きく進展。一方で、失業の怖れを感じた手工業者や労働者たちが、機械から仕事を奪い返そうと、各地で打ち壊しの暴動を起こした。

「ラッダイト運動」である。いま、キャッシュレス決済などのいわゆる「フィンテック」や、先頃から騒がれているAIやロボットの進化に対して、シンギュラリティだの、「人間をいつか凌駕するかもしれない」だのと怯える人たちは、人間に恩恵をもたらす機械たちをハンマーでブチ壊した、19世紀の荒くれ工員たちと、思考回路は大差ない。

 最近では、技術革新や高度情報化社会に反対し、それらを阻止しようとする人たちの思考を「ネオラッダイト」と呼んでいるが、残念すぎる考え方だ。フィンテックもまたAIによって支えられているが、客の利便性を重視せず、キャッシュレス決済の導入を頑なに拒む人たちは、ネオラッダイト運動を起こしているようなものである。

 どうしてテクノロジーを利用し、共生、共創していくことを、自分たちなりに考えてみようとしないのだろうか?  「宝」の持ち腐れもいいところだ。

 IT革命とグローバリズムにより、経済格差や情報格差、教育格差など、至る分野で格差が拡大した。そして昨今、AIを使いこなす勢力と、そうでない人たちとの格差の拡大が始まっている。

 使いこなす側が受けられる恩恵と、使いこなせない側の不利益は、これまでとは比べものにならない。とてつもない「AI格差」の時代が始まりつつあるのだが、それが街の小さな飲食店にまで及ぼうとしているのだ。

◆「雇用大崩壊」が起きようとしている

 AIによってリデザインされる世界では、従来型の人間の価値観は次々と消滅していく。それに伴い、労働環境や雇用環境、サービスの概念などが劇的に変わっていくだろう。

 いわゆる「昭和型」「20世紀型」の価値観はすべて駆逐されてもおかしくはない。そして、まさにいま、それらに紐付いた人々の雇用やサービスのあり方の「大崩壊」が起きようとしているのだ。

「働き方」で言えば、もはや労働や雇用という概念すら消えてなくなるかもしれない。21世紀は、自ら仕事を作り出し、自ら稼ぐことが主流となる時代になるだろう。

 繰り返しになるが、AIやロボット、フィンテックなどの「テクノロジー」は決して、人々を不幸にしたり、人々の仕事を奪ったりするものではない。効率化や最適化によって人間に新たな時間を生み出し、21世紀型の新しい仕事も増やし続けている。

 それらをケアするための新しい学問が生まれ、システム従事者やメンテナンス技師、AIアプリ開発の仕事は、慢性的に人が足りない状態になる。例えば、レジ打ちのような多くの人間にとって「面倒くさい」仕事がAIやロボット、フィンテックの力でなくなれば、その分、人間は新たな価値を創造するために時間をより有効に使うことができるようになる。

 テクノロジーの進化のおかげで、やがて人間は、あらゆる面倒な仕事や労働から解放される。楽しいことだけ、好きなことだけやっていていい時代になる。「遊び」で存分に稼げるようにもなる。

 テクノロジーとの共生、共創を進めない人たちは、自ら不幸になる道を選んでいるようなものである。

※堀江貴文・著『雇用大崩壊~マンガある若手技術者の会社を変える挑戦~』より抜粋して再構成

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