堀江貴文「”複雑に考えたがる人”は逃げている」 シンプルに考えるには「能力」が必要だ

新型コロナウイルスによる自粛ムードへの疑問、現地レバノンでのカルロス・ゴーン氏との対談など、その時最も関心の高いテーマを一刀両断するYouTubeチャンネルがメディアでも話題の堀江貴文氏。その登録者数は100万人を突破した。

超多忙なスケジュールで国内外を飛び回る堀江氏だが、スキマ時間に触るスマホで仕事の確認や指示は欠かさない。

「いかに時間を使わずに多くのものを生み出し、効率よく世の中に伝えるか」を徹底するホリエモンの「時間術」とは? 堀江氏が何よりも大切にする「時間」だけをテーマにした初の著書『時間革命』から一部を抜粋・再構成して紹介します。

■シンプルとスピードが最強である

時間を増やすうえでは、「シンプルに考える」ことが欠かせない。

そんな話をすると、「そうは言っても、現実の社会のなかでは、なかなか単純に割りきれないこともあるんですよ」と愚痴をこぼす人がいる。

そんな人間の事情など知ったことではないが、何よりも気に食わないのは、そういうことを言う人は、「物事を『複雑に考える』ほうが難しい=価値が高い」と考えているらしいということだ。思い上がりもいいところである。

真実や価値あるものは、いつだってシンプルだ。たとえば、アインシュタインの「一般相対性理論」は、その背景には複雑な計算式を持っていながらも、最終的には「E=mc²」という等式で表現される。

広大な宇宙の仕組みを説明するアイデアが、たったこれだけの式に集約できるのだ。「シンプルこそが最高」ということは、人類が長年の経験から得た教訓ではないかと思う。

実際のところ、物事なんて複雑に考えるほうがラクなのだ。世の中はいくらでも複雑に考えられる。それなりに頭がよければ、もっともらしい理屈をつけて、いつまでも考えを引き延ばしていられるから気楽なものだ。

むしろ、シンプルに考えるほうが、一定の「勇気」や「エネルギー」が必要になる。企業の経営者を見ていても、シンプルに考える能力がある人とない人がいる。

はっきりと明暗が分かれるのは、「会社にとって最も大切なことは?」という質問だ。こう聞かれたとき、「社会に貢献すること」とか「従業員を幸せにすること」とか「顧客の満足」というトンチンカンな答えをしてしまう経営者には、物事をシンプルに考えようとする「覚悟」がないなとぼくは感じる。

「社会貢献や従業員満足なんてバカらしい」という話がしたいわけではない。考えればわかることだが、株式会社の本来の目的は「株主へ利益を還元すること」である。それ以上でも以下でもない。

そのために、よいサービスや商品をつくって売る。それで顧客は満足する。そうなれば、納税額も増えるし、投資マネーも集まって、経済が活性化される。こうして結果的に、社会貢献が実現される。これが正しい順序というものだ。

このシンプルな原点すら見失っている社長が多い。そのせいで、ムダに複雑に考えてしまい、時間を浪費してしまう。ビジネスの最前線では、いつもスピードが命である。シンプルに本質をおさえた思考ができない人は、いつも「時間の勝負」で敗北することになる。

■「トレードオフ」がわからない人たち

個人についても、まったく同じことが言える。

「好きな仕事に思いっきり打ち込みたい。でも、家族と過ごす時間も大切にしたいし、趣味や勉強の枠もしっかりと確保したい。収入はたくさんほしいけど、やっぱりリスクは取りたくないから、このままサラリーマンがいいなあ」

こういう人は、自分の欲望の本質がわかっていない。世の中はトレードオフが原則だ。例外はない。これらの希望をすべて叶えることなどまずできないし、そんな虫のいい話があるとすれば、眉唾だと思ったほうがいい。

「シンプルに考えて、自分時間に満たされた人生を生きる」とは、全部を思いどおりにして、「あれも、これも」をバランスよく手に入れるということではない。

むしろ、本当に大切にしたいこと”以外”はすべて手放し、自分の根本的な欲求に向き合うことなのだ。

「自分にとっていちばん大切なことは何か?」――それをシンプルに絞り込めた人こそが、自分の時間を手に入れているのである。

堀江 貴文:実業家

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