報ステ 自らBPO申告は自作自演か

テレビ朝日は10月29日付で、『報道ステーション』の番組プロデューサーとニュースデスク、社会部記者の3人を減給処分に、報道局ニュースセンター長ら4人を譴責(けんせき)処分にすると発表した。処分の理由は、9月10日の九州電力川内原発の再稼働を巡る放送だった。
 この日、原子力規制委員会が川内原発(1、2号機)について、新しい規制基準に適合したとする審査書を正式決定し、田中俊一・委員長が会見を行なった。報ステは会見の中で田中委員長が「周辺の火山に対する安全審査基準の修正を示唆した」と報じ、ナレーションで「修正した正しい基準で再審査すべき」と批判したが、そこに誤りがあった。
 田中委員長の発言は実際は竜巻の審査基準についてのもので、周辺の火山とは全く関係がなかった。さらに放送では、田中委員長が火山に対する安全審査基準についての質問にほとんど応じていたにもかかわらず、大部分を省いて回答を拒んだように編集していた。
 翌日の原子力規制庁の抗議を受け、2日後の9月12日には報ステ番組内でメインキャスターの古舘伊知郎氏が「大きな間違いを犯した」と謝罪し、9月末の定例会見では吉田慎一・社長自ら「完全なる事実誤認があり、非常に深刻な問題と受け止めている。関係者と視聴者に深くお詫びしたい」と頭を下げた。
 今回の報ステ関係社員の処分はこの誤報を受けてのものだが、吉田社長は奇妙な釈明をしている。
「BPO(放送倫理・番組向上機構)がこの事態を重視し、取り上げたことを非常に重く受け止めている」と述べたのだ。
 処分に先立つ10月10日にはBPOの放送倫理検証委員会が今回の報ステの川内原発誤報を審議対象にすることを決定している。だが、テレ朝側は自ら「報ステを審議対象にしてください」と差し出していたのだ。
 放送倫理検証委員会の関係者は首を傾げる。
「通常のケースでは、視聴者から意見が上がってきたり、新聞などで問題になっていたりする番組が審議入りし、局側に報告書を提出させる。ところが今回は、テレビ朝日側から事前に誤報に関する詳細な報告書が持ち込まれた」
 つまり、自らBPOに持ち込んでおきながら、社長が会見で「BPOが取り上げたことを重く受け止める」と反省してみせたのだ。自らの不祥事の捏造というのは聞いたことがないが、少なくとも自作自演ではある。「まるで社として敢えて大きな騒ぎにしたい意図があるようだ」(報ステ関係者)との声も出た。
※週刊ポスト2014年11月21日号

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