塩野義社長、コロナ飲み薬「年内に承認申請」 供給体制も整備

塩野義製薬の手代木(てしろぎ)功社長は5日、毎日新聞のインタビューに応じ、開発中の新型コロナウイルス感染症の軽症から中等症患者を想定した飲み薬タイプの治療薬について、年内に「条件付き早期承認」の申請を目指す考えを明らかにした。実用化をにらみ、年末までに国内で100万~200万人分の供給体制を整えると説明。海外への供給も視野に、米保健福祉省の生物医学先端研究開発局(BARDA)と協議を始めているという。 【承認ワクチン3社】接種間隔や年齢、有効性の違い  国内で承認済みの軽症者向け治療薬は現在、点滴薬だけだ。軽症段階から自宅で服用でき、重症化が防げる飲み薬が実用化されれば、新型コロナ対応も大きく変わる可能性がある。米ファイザーなど米欧の製薬大手も年内の実用化を視野に開発を急いでいる。  塩野義は7月から国内で初期段階の治験を開始。感染初期に1日1回、5日間続けて投与することを想定しており、体内のウイルス量を低下させることで重症化の抑制を狙う。  手代木氏は「これからの進捗(しんちょく)具合による」としたうえで、初期段階の治験を9月末までに終え、続いて新型コロナの軽症者ら数百人を対象に第2相治験を始める意向を示した。第2相治験では、患者を治療薬の候補を投与する群と偽薬を投与する群に分け、入院や重症化のリスクをどの程度減らせるかを評価。11月中には終えたい考えだ。  手代木氏は「治療薬の有用性が明らかになった時、安全性モニタリングなどを条件に仮でもいいので承認され、経口(飲み薬タイプ)の新型コロナ治療薬が使えるようになることは、世の中にとっても重要ではないか」と指摘。最終段階の第3相治験をしつつ、前倒しで条件付き早期承認を得ることを目指すとした。  条件付き早期承認は、既存の治療法がない希少疾患などを対象に、一定の安全性、有効性を確認した上で第3相治験の前に承認する制度。塩野義の意向に対し、承認審査を担う厚生労働省がどう判断するかが焦点となりそうだ。  米BARDAは新型コロナのワクチンでも各国の開発企業を支援した経緯があるが、治療薬の買い取りについて、手代木氏は「問い合わせを受けている」と言及。海外供給をにらみ第2相治験を海外で実施することも検討しながら、「グローバル(展開)を考えると、(供給量は)500万~1000万人分も視野に入れなければならない。来年の前半ぐらいまでに供給能力を増強したい」とした。【横田愛】

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