塩野義製薬は25日、新型コロナウイルス感染症の軽症・中等症患者向けの飲み薬について、厚生労働省に薬事承認を申請したと発表した。国内では米国製の軽症患者向け飲み薬2製品が実用化されているが、承認されれば国産では初めてとなる。最終段階の治験が続く中、中間解析結果に基づく申請で、治験完了前の段階でも実用化を可能とする「条件付き早期承認制度」が適用されるかが焦点となる。
塩野義が開発したのは、新型コロナウイルスの増殖に必要な酵素を阻害する抗ウイルス薬。患者約2000人の参加を見込む最終段階の治験のうち、約500人の中間解析結果に基づき承認申請した。同社は申請データの詳細は発表していないが、偽薬(プラセボ)と比較して治療薬を使ったグループでは体内のウイルス量の低下が早かったとした。
一方、症状改善の効果については、新型コロナに特徴的な12症状を合計して数値化したものでは、偽薬と比較して有意な差は認められなかったが、このうち喉の痛みやせきなど呼吸器症状については、治療薬のグループで有意な改善効果を確認したとしている。
条件付き早期承認は、医療上の有用性は高いが、患者が少ないなどの理由で治験の早期完了が難しい医薬品について、一定の安全性と有効性を確認したうえで、実用化後のデータの追加提出などを条件に、治験途中での申請・承認を認める制度。希少疾患などを念頭とした制度で、厚労省と審査実務を担う医薬品医療機器総合機構(PMDA)は、適用の可否を慎重に判断するとみられる。
塩野義は治験の残る部分についても継続しており、最終的なデータを厚労省に追加提出する。承認が得られれば、実用化後も投与した患者を追跡調査し、有効性、安全性をさらに確認する考えだ。
塩野義は今年度中に100万人分の供給が可能としており、政府は買い上げ契約を結ぶことも検討している。【横田愛】