宮城県塩釜市の塩釜水産物仲卸市場を構成する卸売、小売業者らでつくる4協同組合が、業務効率化のため合併することを決め、6月1日に新組合「協同組合塩釜水産物仲卸市場」として発足する。市場環境が厳しさを増す中、組織の統合で経費削減や意思決定の迅速化を図り、市場の存続に向けてテナント誘致などを展開する。
機動的な運営可能に
合併は各組合の総会で賛成され、市が5月17日付で認可した。
4協同組合に加盟する市場の店舗数は4月1日現在、魚類卸商業協同組合33、鮮魚卸協同組合23、中央鮮魚商業協同組合23、水産物加工品商業協同組合9で計88。店舗数が最も多く、財産も多く有する魚類卸が他の3組合を吸収する形で合併した。
新組合の始動で今後、機動的な運営が可能になるとして、時流に合わせたイベントや新規事業の展開のほか、人件費が3分の1になるなど固定費の削減が見込めるという。
所々欠けたままになっている売り場の配置も再構成し、空き区画を集約。休憩所スペースを活用し飲食店の出店を募ってフードコートを整備し、野菜や果物販売店、雑貨店などに貸し出すコーナーも拡大する。
市場は施設の老朽化が進んでおり、新組合は本年度内に建て替えの方向性を検討する再生検討委員会を設ける。
市場が設立された1965年当初は367店が並んだが、バブル崩壊やリーマンショックの影響で撤退が相次ぎ、東日本大震災時は水揚げや取引先の減少で売り上げが低迷、2011年には147店となった。
経営者の高齢化進む
若手店主らでつくるグループが18年に実施した調査に基づく試算では、25年以降も事業継続できる店舗数は最盛期の7分の1の約50に落ち込む。経営者の多くが70歳を超え、後継者がいないのが理由という。
4組合合併の必要性は10年以上前から意識されていたが、本格的な協議が始まったのは約2年前。協議を主導したのは若手店主らで、各組合の三役らで構成する組合再生委員会が検討を進めてきた。
新組合の理事長に就任する魚類卸商業協同組合の理事長坂本和正さん(48)は「市場存続の前提となる合併まではこぎ着けることができた。新しい事業などを考えて『また来たい』と言ってもらえるような場所にしていく」と力を込めた。