日本刀に自転車、競馬……こんなものにまで“女子”がつく、もはや飽和状態の「○○女子」。そんななか、企業や業界発信で生まれた「○○女子」も多い。代 表的な例でいえば、カープ女子だろう。さらにここにきて、奇抜な女子も登場。「ドボジョ」とは、土木業界で働く、学ぶ女子のこと。漫画『ドボジョ!』も後 押し、一昨年からメディアで取り上げられ、注目を浴びている。
「『ドボジョ』への反響は、女性は冷ややか、男性からは響きが良くないという声が多くありました。でも、これは土木業界やマスコミがはやらせようとしたも のではなく、関東学院大学工学部の女子学生たちの間で、土木系のクラスの女子を『ドボジョ』と呼んでいたものが広まったと言われているんです」(土木学会 小松淳土木広報センター次長)
また、登山といえば、中高年の趣味であったはずが、ここ数年で、登山者のなかにカラフルなファッションに身を包む山ガールが増殖した。実はコレも、意外なところに仕掛け人が存在した。その背景を山と溪谷社『ROCK&SNOW』編集長・萩原浩司氏に聞いた。
「山ガールのトレードマークといえるアイテムが、山スカート。これを広めたのがアウトドア・スタイルクリエイターの四角友里さんです。彼女が山スカートと 出合ったのは’04年。ニュージーランドでのトレッキング中、スカートをはいた女性が、器用に着替えをする姿を見かけたそうです。かわいらしい見た目もさ ることながら、サポートタイツを下にはけば、歩きやすくトイレや着替え時に便利で、体形もカバーできるなど、女性にとっては利便性が高い。次第に雑誌に取 り上げられるようになると、山スカートをはく女性が増え、登山者たちにとっては徐々に見慣れた光景になっていきました。’09年頃、ついに山道具店にもス カートが並び始め、女性向け登山誌も相次いで創刊。この年に登山者以外にも一気に山ガールが認知されたといえそうです」
◆業界の[○○女子]商戦をひもとく
○○女子や○○ガールというネーミングは、マーケティングの一環で広まったものも。博報堂ブランドデザイン若者研究所リーダーの原田曜平氏は、その仕組みを次のように解説する。
「野球、プロレス、登山といった、男性の愛好家が中心で行き詰まりを見せていた業界が、○○女子という言葉を、女性を取り込むために活用した面はあるで しょう。一方で、男性の趣味をファッション的に楽しむ女性が増えていた面もある。山ガールやカープ女子などは、両者の同時進行により成功した事例でしょう ね。なお最近は、○○女子という言葉自体がブームになったことで、競馬のUMAJOのように、業界の仕掛けが先行した事例も増えている印象です」
「例えばカープのマツダスタジアムには、バーベキューをしながら観戦できるエリアがありますし、ソフトバンクも来場女性全員へのユニフォームのプレゼント を行っていました。最近はスイーツに力を入れるスタジアムも増加中です。そのような仕掛けで○○女子と呼ばれるファンは増えているでしょうが、大事なのは 彼女たちを本当の野球ファンにできるかどうか。野球に限らず○○女子を一過性のブームで終わらせないためには、これからが勝負と言えます」 <取材・文/ 古澤誠一郎 廣野順子 田幸和歌子 カープ女子撮影/北條かおり(PHOTO-CHACCO)>