雇用や働き方の変化で、インターネットを使った仲介サービスや直接受注で仕事をするフリーランスが増えるなか、そんなネット受注のフリーランスの8割以上が働くうえで不安を抱え、5割を超える人たちが仕事で何らかのトラブルに遭遇した経験があった。日本労働組合総連合会(連合)が「ネット受注をするフリーランス」の意識や実態を把握するための調査結果を、2020年2月20日に発表した。
「総合満足度」では半数近い人が「満足」を表明したものの、収入満足度では「不満」が「満足」を上回った。
月収「30万円以上」は1割に満たない
「ネット受注フリーランス」1000人の回答者が従事するフリーランスの仕事の「本業」「副業」別は、「専業」が37.5%、「本業は別にあり、副業」が44.8%、「本業を決めず複数就業の一つ(複業)」が17.7%だった。
世代別にみると、20~40代では「副業」が多く、20代(129人)=54.3%、30代(201人)=53.2%、40代(268人)=49.3%だった。50代以上では「専業」の割合が高く、50代(257人)=48.2%、60代以上(145人)=42.1%だった。
従事している仕事の内容は、「データ入力作業」が29.8%で最多。次いで「文書入力、テープ起こし、反訳」(17.7%)、「添削、校正、採点」(12.2%)、「原稿・ライティング・記事等執筆業務」(6.6%)、「取引文書作成」(6.4%)、「デザイン・コンテンツ制作」(5.1%)――などが続いた。
就業期間については「1年未満」(14.5%)や「5年」(16.8%)、「10年以上」(16.1%)などに回答が分かれ、平均は4.7年。働き方別にみると、通算の経験年数の平均は、専業6.4年、副業3.5年、複業4.0年で、専業のフリーランスで働く人が最も長かった。
現在の働き方で得られる月収(税込み)は「5万円以下」が40.8%で最も多く、次いで「5万1円~10万円」の25.2%だった。「30万1円以上」は9.9%で、1割に満たなかった。
全体の平均額は、10万5410円だった。
就業タイプ別でみると、専業では「30万1円以上」が23.2%となった一方、「5万円以下」は19.7%、「5万1円~10万円」は20.0%。副業や複業では「5万円以下」がだいたい半数だった。
就業タイプ別の平均月収は、専業16万8600円、副業6万201円、複業8万5960円。
報酬へのトラブル、多く……
「ネット受注のフリーランス」として働くうえで感じる不安について聞いたところ、80.9%が「不安に思うことがある」と回答。一方で「不安に思うことはない」という人も19.1%と2割近くいた。
世代別では、不安を感じている人の割合が最も高かったのは30代で91.5%。次いで、20代が88.4%、40代の84.7%、50代の73.9%と続いた。
「不安に思うことがある」と回答した人(809人)に、その理由を聞く(複数回答)と、「収入が不安定、低い」と答えた人が48.2%と最も多く、次いで「納期や技術的になど無理な注文を受ける可能性がある」(22.7%)、「報酬がきちんと支払われるかわからない」(22.1%)、「報酬額や条件がクラウド・ソーシング事業者や発注者に一方的に変更される可能性がある」(21.1%)、「仕事がない場合、失業手当のような保障がない」(20.4%)――などが挙げられた。
収入が不安定であることのほか、依頼内容や報酬の支払いでも不安を持つ人が多いことが示された。
「フリーランスとして業務上でトラブルになった経験があるか」聞くと、50.6%が「ある」と回答。「ない」の49.4%と拮抗する格好になったが、世代別では、若いほど「ある」の割合が高く、20代では71.3%だった。
トラブル経験が「ある」と回答した人(506人)に、その内容を聞く(複数回答)と、「不当に低い報酬額の決定」(24.9%)、「納期や技術的になど無理な注文」(24.1%)と続き、次いで「報酬の支払いの遅延」(20.9%)、「報酬の不払い、過少払い」(20.8%)、「一方的な報酬額の引き下げ」(19.0%)――など、報酬へのトラブルが多かった。
不安やトラブルあるけれど、「満足してる」
不安やトラブルに悩まされることもある「ネット受注のフリーランス」だが、その満足度を聞いたところ、「大いに満足」(11.1%)と「やや満足」(37.5%)を合わせて、48.6%が「満足」と答えた。「大いに不満」(3.7%)「やや不満」(9.2%)を合わせた「不満」(12.9%)を大きく上回った。
20代(53.5%)と50代(51.4%)の半数以上が、「満足」を表明している。
「ネット受注のフリーランス」としての働き方を選んだ理由(複数回答)をみると、「収入を増やしたかったから」と答えた人が44.9%、「自分のペースで働く時間を決めることができるから」が42.0%でトップ2。以下、「働きたい仕事内容を選べるから」(22.3%)、「自分の夢の実現やキャリアアップのため」(19.8%)、「働く地域や場所を選べるから 」(19.4%)が続いた=下図参照。
収入アップや自身に合った働き方を重視している人が多いようだ。
世代別にみると、20代では「収入を増やしたかったから」(50.4%)や「自分の夢の実現やキャリアアップのため」(25.6%)が、また60代以上では「自分のペースで働く時間を決めることができるから」(49.0%)や「専門的な技術や資格を活かせるから」(24.8%)、「雇用されない立場で働きたいから」(16.6%)が、それぞれ他の世代と比べて多かった。
さらに収入についての満足度をみると、「収入・報酬額の多さ」では、「大いに満足」(4.5%)と「やや満足」(23.3%)を合わせた「満足」派は27.8%。「大いに不満」(11.7%)と「やや不満」(19.6%)を合わせた「不満」派は31.3%にのぼった。
「収入・報酬の安定度合い」を聞くと、「大いに満足」(6.6%)と「やや満足」(23.1%)を合わせた「満足」派は29.7%。「大いに不満」(11.7%)と「やや不満」(20.0%)を合わせた「不満」派は31.7%となり、どちらも「不満」派が「満足」派を上回った。
なお、調査は2020年1月22日~24日にインターネットで実施。ネットで仕事を受注する働き方をしている全国の20歳以上のフリーランス1000人が回答した。