36度未満の「低体温」の子どもが増えているという。実は学力や人格形成にも影響するという低体温、あなたのお子さんは大丈夫だろうか? 子どもの健康福祉に詳しい、早稲田大学人間科学学術院の前橋明教授に伺った。
※ここでの「低体温」は臨床医学上の定義とは異なり、「35度台の体温」のことを指す。
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「低体温」という現象は、いわば体温調節を司る「自律神経」(体の機能を自然と調整する神経)の働きが悪いことの象徴です。こうした生活リズムの乱れによる自律神経の機能低下は、子どもの学力や人格形成にも関連しています。
私の研究室の調べでは、就寝時刻が夜22時以降と遅い子どもの割合が大きい地域は、全国学力テストの正答率が低い傾向にありました。
また、大学の学生たちに子ども時代の生活をたずねることがあります。そうすると、大学に入ったあとも「伸びしろ」のある学生は、朝から元気に学校へ行き、日中は体がクタクタになるまで遊び、夜は早く寝ていた……といった、メリハリのある子ども時代を過ごしている割合が多いのです。一方、大学に入ることを目標に夜遅くまで勉強し、学校ではうつらうつらすることが多かった学生は、成績が伸び悩んだり、他者と関わったりすることが苦手であるように感じられます。これでは社会に出てからが心配です。
自律神経は「生きる力」そのものであり、主体的に考え、行動するためにはなくてはならない機能です。早寝・早起きができていればそれでよいという単純なことではなく、これまでの生活を見つめ直し、子どもにとって生理的に適した心身のリズムを大切に考える必要があります。そうしないと、現在はおろか、将来的にも発展が望めない可能性があるのです。
自律神経の機能を向上させるには、遅寝・遅起きに代表される、悪循環に陥った生活リズムを改善する必要があります。