壊す快感…古民家「再生」ボランティアが人気

 歴史的な古い町並みを残す兵庫県篠山市で、ボランティアらが古民家を取り壊し、改装する「再生プロジェクト」が“意外”な注目を集めている。京阪神を中心とする登録者は約130人にのぼっているが、主催者側は魅力の一つに「家を壊すことによるストレス発散」をあげる。非日常の“破壊行為”が、何かとストレスのたまる現代人の心をとらえたようだ。
 城下町のたたずまいを残し、国の重要伝統的建造物群保存地区に選定されている江戸期建築の旧商家(同市河原町)。10月上旬、ボランティアのメンバーが床の木材をはがしたり、壁をハンマーでぶち抜いたりと、派手に取り壊した。現在は、白いヘルメットに軍手姿の約10人が、プロの大工に交じって電動カンナやドリルで木材を削るなど改装作業の真っ最中で、来年3月ごろには完成する予定だ。
 「スッキリ感」のとりことなり、昨年12月には同県明石市から篠山市に引っ越したという看護師、西村裕美子さん(57)は「作業に参加しやすいこともあって転居しました。本職の大工さんや左官屋さんに直接教えてもらえるので勉強になります。ストレス解消にもなる」と笑う。
 同市での古民家再生プロジェクトは平成17年にスタート。最初に始めたNPO法人から、昨年12月に同法人「町なみ屋なみ研究所」が引き継いで続けている。改装費が業者の半額程度で済むことに加え、プロ並みに仕上がる-というメリットがあり、これまでに空き家5軒がカフェやギャラリーなどに生まれ変わった。参加者も、多いときで30人程度集まる人気ぶりだ。
 同研究所の酒井宏一理事長(55)は「普通ではあり得ない『壊す』体験が、ストレスのたまった人には憂さ晴らしにもなっているようです」と話す。もちろん、主たる目的は「伝統的な町並み景観の保存」で、伝統的意匠を保ちながら、経済的負担を少なくした建物の改装や、空き家となった建物の有効活用などを目指す。
 作業は、毎月原則第1・第3土曜日に行われ、今月18日も予定されている。酒井さんは「伝統的な古民家は地域だけでなく、みんなの財産。私たちボランティアの力が保存・活用の一助になれば」と話している。問い合わせは、同研究所((電)079・506・3552)。

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