変わる大学のミス・コンテスト…地域に貢献、性別不問も

セクハラ非難の中、工夫凝らす

 この時期、大学の学園祭などで「ミス・コンテスト」が多く開かれる。「セクハラにあたる」などの非難が以前からある上、今年は主催する学生団体の不祥事で、コンテストが中止になる大学も出た。厳しい視線が注がれる中、工夫を凝らして新機軸を打ち出す学校も目立つ。最近の事情をのぞいた。

大阪府吹田市の商店街に10月中旬、地元の関西大学の男女学生12人が姿を見せた。男女ペアで飲食店を回り、トンカツやパスタなど各店の自慢料理を「これはおいしい」「生地が良くできている」などとリポートした。

彼らは、12月4日に開かれるコンテスト「ミスター&ミスキャンパス関大」の最終審査の出場者だ。食リポートの様子は後日、ツイッターなどに掲載され、店の宣伝に一役買う。

2012年に始まったコンテストは「地域活性化」を掲げる。7月に最終審査進出を決めた学生は、夏祭りなどのイベントで司会を務めたり、ボランティアとして設営準備を手伝ったりと、地元を盛り上げる活動を続ける。

主催の学生団体、吹田クリエイティブムーブメンツ(SCM)代表の小椋一平さんは、「世話になっている地元に貢献することは大切。地域活動を通じて出場者の人間的な成長も期待できる」と話す。地元商店街の理事長、西田宗尚さんも「荷物運びなどで若い人の力を借りられ、本当にありがたい。コンテストは若者を商店街に呼ぶきっかけにもなっている」と評価する。

ミス・コンテストは、国内の大学で行われるものだけでも200件ほどあるとされる。アナウンサーや芸能人を輩出するなど、注目度は高い。一方、「男性目線で容姿の優劣を決める女性差別」などの指摘もある。今年は、主催の学生団体で未成年の飲酒が発覚し、慶応大学のコンテストが中止になる騒ぎもあった。

多くの人から理解や支持を得ようと、女性の美を競うといった趣旨を見直す動きが広がってきた。

日本大学芸術学部で開かれる「ミス日芸コンテスト」では、今年初めて、応募者の性別を不問にした。最終選考に出場する5人の中には男性も入った。

11月5日の最終選考では、外見だけではなく色々な視点から選ぼうと、長縄跳びを何回跳べるかや、見えないものを触った時のリアクションの良さなども審査する。肌年齢も測定しており、若々しさもポイントになるという。

2002年から毎年開催している大阪大学では、「個人の容姿を判断基準にすることがセクハラだ」と学内で指摘されたことから、今年は「内面の魅力」に焦点を当てる内容に模様替えした。

5日のコンテスト当日まで誰が参加しているか明らかにせず、出場者はぶっつけ本番でスピーチや特技を披露し、その成果を競う。

ただ、臨床心理士で一橋大学特任准教授の柘植道子さんは「個性や能力を重視するといっても、外見も審査対象とするなら、女性の商品化につながるという点で従来のミス・コンテストと変わらない」と手厳しい。「外見は一切関係なく、例えば弁舌、表現、リーダーシップ、問題解決などの力が優れているかを競わせる方が、その大学らしさを一番持つ人を選ぶ本来のコンテストではないか」と話す。

嫌な思いする人に配慮

東京大学教授(ジェンダー論)の瀬地山角(かく)さんの話

ミス・コンテストは、人間が女性を外見で判断してしまうことをあえてクローズアップするものだ。仕事などの関係ない場にまで外見を要求されるような圧力を感じて、不快感を抱く人はいる。

目指すものがあって応募する女性がいる以上、コンテストが良いか悪いかを簡単に言うことはできない。だが、自主的に開こうとする学生たちも、嫌な思いをする人が必ずいるということに配慮する必要があるだろう。

明治時代にはすでに存在

 日本のミス・コンテストは、1891年(明治24年)に行われた「東京百美人」が始まりと言われる。東京・浅草にあったタワー「凌雲閣」の運営会社が客を呼ぶために企画した。階段の壁に約100人の芸者の写真が貼られ、それを見た来場者が投票する形式だった。

戦後、食料や衣類を援助した米国民に感謝を伝える親善使節として、日本を代表する女性を選ぶ「ミス日本」が1950年に始まる。大学のコンテストでは、青山学院大学で行われるものが最も歴史が長いとされ、今年で41回目となる。

審査の是非、決着難しい

 ◎取材を終えて 「得難い経験ができた」と話す参加経験者、「美って何だろう」と試行錯誤する主催者、「女性が商品化される」と危惧する声……。どれもうなずけるものだった。改めて、人を見た目で審査することの是非に、決着をつけるのは難しいと感じた。一方で、今年新たにコンテストを始める学生は、実施の理由を「学園祭の目玉を作り、にぎわいを生みたい」と説明した。従来像を追いかけるだけの気がして、少し寂しい。様々な意見があることを踏まえ、それでもやるなら、若者ならではの感性で新しいものを創造してほしいと思う。(及川昭夫)

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