【くらしナビ】
■時代感覚取り入れ進化
東京・銀座にかつてない変化の波が押し寄せている。売り場面積を大きく広げ銀座の高級感を打ち出したり、若い女性向けに特化した売り場を新設する百貨店があるほか、高級品専門店が新規顧客開拓に営業日を変えたりなどの動きも。増加する外国人観光客への対応も急がれるなか、活性化を目指す銀座のいまを見た。(財川典男)
◆上流・洗練志向で
銀座4丁目交差点角という絶好の立地だが、店舗面積が狭いことがネックだった三越銀座店は、420億円を投じた再開発で売り場面積を1・5倍に拡大した。片桐英樹・銀座店リモデル推進事務局リーダーは、「上流・洗練志向という銀座の良さを前面に出していく」と強調する。自社バイヤーが厳選した婦人服、紳士服などを「銀座スタイル」と名付けた。
店舗リニューアルでは、銀座の街全体の活性化も重視した。屋外に芝生もある「銀座テラス」を9階に設けた。屋内部分と合計すると約3000平方メートルの広いフロアにレストラン・カフェ以外の売り場がなく、託児所や銀座の街のインフォメーションコーナーを設置した。売り場面積が収益に直結する百貨店でワンフロア全部をフリースペースにするのは異例。「銀座テラス」の営業時間は午後11時までなので、待ち合わせの新名所になりそうだ。
銀座に多い外国人のために英語、中国語で対応できる観光案内所を設置。最近増加している中国人観光客をターゲットにした中国のデビッドカード「銀聯(ぎんれん)カード」で日本円を引き出せるATM(ゆうちょ銀行)を設置した。「店舗で銀聯カードは従来から使用できたが、キャッシュも引き出せるようにした」(片桐氏)。銀聯カードは、銀座の百貨店各店で利用可能。各店とも中国語の表示や中国語のできる要員を案内所に配置するなど中国人観光客への対応を強化している。
「銀座」でもユニクロ、H&Mなど低価格なファストファッション店の勢いは衰えない。松坂屋銀座店は4月に米国系ファストファッションの「フォーエバー21」をオープン。「20~30歳代の女性の来店客はオープン当初2倍、現在も5割増」(松坂屋銀座店)と来店客増に結びついている。松坂屋と大丸は経営統合の仕上げで3月に合併し、「大丸松坂屋百貨店」が誕生した。22日に松坂屋銀座店に新設する売り場は若い女性顧客層向けで、大丸心斎橋北館(大阪)、大丸京都店で成功した「うふふガールズ」。「フォーエバー21」の新顧客を「うふふガールズ」でも取り込む作戦。
松屋銀座も若い女性をターゲットに小型店舗「プチマルシェ」を「銀座インズ1、2」内に8月下旬にオープンした。松屋銀座でとりこぼしていた20歳代の若い女性顧客層獲得のために百貨店の店舗外のビルに出店し、「松屋銀座の色を薄めた店舗」(広報課)にした。
◆初の営業日変更
三越銀座店と中央通りをはさんで向かい側にある和光は昭和22年の開業。10月から初めて日曜・祝日の営業に踏み切った。宝飾品など高級品主体の和光は、百貨店の外商部門のように「顧客ごとの担当者が店内で接客応対する。シフト勤務が導入しにくい」(広報)ため休日営業をしていなかったが、新顧客獲得のために日曜・祝日営業を開始した。
若い女性、外国人など銀座の店舗の顧客層も多様化している。洗練された上質感という良い面を残しながらも、銀座は時代に合わせた形で変わっていくのだろう。