賃金上昇を起点とした経済のサイクル(賃金上昇⇒需要増大⇒インフレ)が回りつつあることから、今後も緩やかな利上げが続くとみています。具体的には2025年末から2026年のはじめに政策金利が1.0%程度になるというのが私の見立てです。 石破首相も岸田路線を踏襲して株価を意識した金融政策を行う可能性が高いため、今のところ新政権発足による大きな影響はないと考えられます。 この予測を踏まえると、住宅ローン金利は0.75%程度上がり、現在の0.5%前後から1.25%前後にまで上がる可能性があると考えておいたほうがいいでしょう。 一方、金融機関間での新規ユーザー向けの融資合戦は依然として熾烈です。金利が1.25%まで上がったとしても、ペア連生団信の上乗せ金利の引き下げや無料付帯など、住宅ローンに付帯する団信(団体信用生命保険)を充実させて差別化を図る動きが顕著になっていくのではないでしょうか。 つい金利にばかり目がいきがちですが、住宅ローンを選ぶ際は団信の充実度もしっかりと比較した上で借りることが大切です。 ■借り換え・借り入れは早いほうがいい ――今後の住宅ローン金利の見通しを踏まえて、住宅ローンの借り換え・新規借り入れのベストタイミングはいつでしょうか? 借り換えについては、現在よりも好条件の住宅ローンがあるならできるだけ早く行動を起こしたほうがいいでしょう。未返済で残っている元本が大きければ大きいほど借り換えメリット額も大きくなるので「いかに多くの元本が残っている状態で、高金利の住宅ローンから低金利の住宅ローンに乗り換えるか」が、借り換えのポイントになります。 新規借り入れ(住宅購入)についても、状況が許すなら早いほうがいいと考えます。首都圏の好立地の物件を中心に住宅価格の高騰が叫ばれていますが、高いからと先送りにするとさらに値上がりする可能性もあります。 インフレが起きている中、不動産価格も今後、年2%ずつ上昇してもおかしくありません。また、住宅購入を待っているあいだに払わなければならない家賃は掛け捨てコストです。一方、住宅ローンは積立投資なので、限られた資金をどちらに振り向けたほうがいいかを考えると、やはり資産になる住宅ローンではないでしょうか。 変動金利の上昇は今後も緩やかに続いていくと思うので、首相や日銀総裁の発言、日銀の金融政策決定会合についての報道などはしっかりとウォッチしておくことをおすすめします。これからの時代、経済ニュースにアンテナを張り、将来の利上げに先回りして備えておくことがとても大切です。 ■塩澤崇(しおざわ・たかし)/株式会社MFS 取締役CMO 2006年に東京大学大学院情報理工学系研究科修了後、モルガン・スタンレー証券株式会社にて住宅ローン証券化ビジネスに参画。モーゲージバンクの設立やマーケティング戦略立案、当局対応を担当。2009年、ボストン・コンサルティング・グループで、金融機関向けの経営コンサルティングに従事した後、2015年9月より現職。
春奈