夏の風物詩 曲がり角 宮城県北各地で花火大会など休止 深刻な人手不足、商店街疲弊も・・・

宮城県北各地で、花火大会などが休止に追い込まれるケースが相次いでいる。浮き彫りになるのは警備や運営を担うマンパワー不足。「一度でも休んだら、再開は難しいだろう」との声も上がる。夏の風物詩は小規模自治体から消えてしまうのか。

 加美町の「かみ鳴瀬川大花火大会」と涌谷町の「わくや夏まつり」は今年の開催が見送られた。ともに地元の商工会や観光物産協会が主体となり、お盆に実施してきた。
 休止理由の一つは警備員不足。県警備業協会(仙台市)などによると、県内には約360社・事業所があり、計約1万人が従事する。警備など「保安の職業」の有効求人倍率(5月)は7.88倍で、全業種平均の1.36倍を大きく上回る。「低賃金」「きつい」というイメージが先行し、新卒採用に苦戦しているという。
 深刻な人手不足に伴い、人件費は跳ね上がっている。国の公共工事の設計労務単価で、県内の交通誘導警備員の検定有資格者は6年前から4割増しの1日1万4900円になった。同様に、民間の契約額も上昇しているとみられる。
 32年続いた花火大会の休止を決めた加美商工会は「十分な警備態勢が組めない恐れがある。来年は東京五輪があるので、人件費を10倍にしても、お盆に必要な警備員を確保するのは難しいと、業者に言われた」と打ち明ける。
 主催者側の要因もある。職員数が減る一方、働き方改革の一環で時間外労働の抑制などを進めており、地域で長く続く催しも例外なく見直しが迫られている。
 涌谷町観光物産協会事務局がある町まちづくり推進課は50年以上の伝統がある夏まつりの中止に踏み切った理由について「人手が足りず、準備が間に合わなかった。ここ数年は運営に携わる人が少なく、どうにかやってきたが…」と話す。
 高齢化や後継者不足にあえぐ商店街の疲弊も遠因になった可能性がある。加美町の花火大会では例年、協賛金で400万円前後を捻出してきた。ある商店主は「毎日、店を開けるので精いっぱいで、集金まで手が回らない。花火で商店街が潤うこともないため、協力に理解を得るのも一苦労で、いずれ限界を迎えていただろう」と声を落とす。
 美里町の「美里まつり」も今年、花火の打ち上げを取りやめる。

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