きょう午後、新料金プランを発表したNTTドコモ。会見に登壇した吉澤社長によると、多くの利用者から指摘されてきた料金体系の複雑さの解消を目指して基本料金や通信料などを一つにまとめ、月額5980円でネット使い放題の「ギガホ」と、最低月額1980円から利用できるデータ量に応じたプラン「ギガライト」の2つを設定。2年間の継続契約や3人以上の家族の加入という条件のもと、”最大4割の値下げ”を実現したとしている。
元NTTドコモ執行役員の夏野剛・ドワンゴ社長は「吉澤社長が自信なさそうにお話されていたように、全然わかりやすくない。シンプルなメニューになったと言うが、ギガライトの中には幾つかの段階もあるし、同じじゃんとも思う。値下げした料金を作ってみました、というだけで、本当に値下げになっているわけではない。色々な条件を組み合わせれば最大4割安くなる、ということ。頭のいい経営企画部が経営へのインパクトがないように、”理論的には安くなるよね”というところを目指してプランを作るから、本当にみんなが安くなるようなプランは作らない。もちろん新しく契約すれば安くなるかもしれないが、ドコモショップ行くと待ち時間も長いし説明もくどくどかかるから、そのままでいいや、という人もいっぱいいると思う。だから結局、みんなが安くなるわけではない」と指摘。
さらに「さらに「この間、僕のtwitterが大炎上した。うちの母親の明細を見たら、3000円分以上もオプションが付いていた。76歳なのに筋トレとか、子ども向けとか、アニメとか。クラウド50GBなんて、どうするんだ!って。他にも女性の体調管理の有料コンテンツも付いていた。だいたいこういうのは加入時に曖昧な感じで、”3か月後に解約してくれればいいし、絶対お得です”とかって言うんだ。ただ、このツイートがテレビに取り上げられちゃったから、もうドコモを辞めて10年なのに、”お前が言うなと言われた(笑)。母親も翌週ドコモショップに言ったら、異常に対応が冷たかったって。石神井公園支店!(笑)」とヒートアップした。
その一方、「ただ、これはドコモだけが悪いのではなく、業界全体の問題。こういう状況になったのは、”変えるぞ”と言って乗り込んできたソフトバンクの孫さんが途中から競争をやめてしまったから。孫さんが仕掛けなければ、auやドコモは自分からしかけなくてもいいやと思ってしまう。それから携帯電話事業は自然独占といって、やはり電気やガスと同じで安定供給しないといけないし、公共の電波という有限な資産を使っているので、民間による完全な自由競争というわけではない。だから他国を見ても、大体3、4社くらいでやって、他にMVNOがあるのが当たり前。もともと総務省(旧郵政省)が自分たちでやっていた事業を電電公社にして、そして民営化してきた歴史があるので、企業とどう距離感を保つかがわかっておらず、こういう混乱が起きるのだと思う。電気やガスの料金が値下げされた場合、皆さんへの請求も自動的に変動するが、携帯電話の場合は自分でショップに行って契約を変えないと変わらない。しかも2年縛りがある上に、契約更新のタイミングの1か月までの間なければダメ、みたいな。あるいは契約状況はオンラインで確認してくださいと言うが、パスワードやIDがわかりにくいし、忘れてしまう。これは2年に1回でもいいから、ちゃんと文書で確認させることを義務付けるべき。それくらい携帯電話会社は儲かってるんだから。総務省はそういうところを是正すべきなのに、わけのわからない”端末代と通信料の分離”とか言っている。高い通信量でもいいからiPhoneを安く買いたいという人だっているんだから、そこじゃないだろうと」と、総務省の対応にも苦言を呈した。
今回のプランの導入で、auの「フラットプラン」やソフトバンクの「ウルトラギガモンスタープラス」などと横並びの料金体系となったドコモ。きょうの発表を受け、「4割下げられる」と異例の言及を行っていた菅官房長官は、個別の企業の経営方針についてのコメントは控えるとしながらも、「一般論として申し上げれば、携帯電話については、公共の電波を利用して提供されるなかで、料金が不透明、そして諸外国にくらべ高いとの指摘があることを踏まえて、料金の引き下げに関してこれまで発言していました」「政府の役割は、事業者間で競争がしっかりと働く仕組みを作ることであり(今国会に提出をしている電気通信事業法の改正案の早期成立に向けて取り組み、)利用者にとってわかりやすく、納得のいく料金、そしてサービスをできるだけはやく実現したい」とコメントした。