外国人が働きづらい日本。原因は「貧しいアジア諸国の憧れの国、ニッポン」という大勘違い

 少子高齢化によって労働人口が減少し、今後外国人労働者はますます日本経済にとってなくてはならない存在となっていく。だが、日本は外国人にとって働きやすい国とはいいがたいのが現状だ。

外国人が働きづらい国、ニッポンに未来はあるのか?

 イギリスの金融大手・HSBCホールディングスが7月に発表した「HSBC2019 Global Report」によれば、各国の企業の海外駐在員たちが「住んでみたい・働いてみたい」とする国のランキングで、日本は調査に必要なサンプル数を満たした33カ国32位という結果となった。

<外国人が働きたい国ランキング>

1位 スイス

2位 シンガポール

3位 カナダ

4位 スペイン

5位 ニュージーランド

6位 オーストラリア

7位 トルコ

8位 ドイツ

9位 アラブ首長国連邦

10位ベトナム

11位バーレーン

12位マン島(英王室属領)

13位ポーランド

14位アイルランド

15位香港

16位マレーシア

17位フランス

18位インド

19位ジャージー(英王室属領)

20位スウェーデン

21位メキシコ

22位タイ

23位アメリカ

24位フィリピン

25位ガーンジー(英王室属領)

26位中国

27位イギリス

28位イタリア

29位サウジアラビア

30位南アフリカ

31位インドネシア

32位日本

33位ブラジル

様々な要因で日本は最下位目前

「理由としては、収入の低さ、ワークライフバランスの悪さ、子育てのしづらさが挙げられており、国内で日々問題になっている点と同様です。白人以外の外国人への差別意識が根強いこと、英語を話せる人が少ないという言語の壁、セクハラやパワハラに関する明確な罰則規定がない企業が多いことなども、外国人から見て働きづらい、日本が立ち遅れていると感じる箇所ですね」と分析するのは経済ジャーナリストの岩崎博充氏だ。

 ちなみにこのランキングでは中国やフィリピン、ベトナム、インドネシアより下位となっている。

国際競争力も落ちている現状

「今後、人手不足が深刻化する中で、アジア、特にフィリピンやベトナムからの労働力が期待されていますが、労働力の穴埋めという意識ではなく、「働きにきてもらう」と迎え入れる気持ちで労働環境を見直していかないと、働きにくる外国人もどんどん減っていってしまうと考えたほうがよいでしょう」

 そもそも、なぜ「労働力の穴埋め」といった上から目線の思考になってしまうのか。

「『多少働きにくい要素があっても、貧しいアジア諸国の人たちは経済的に豊かな日本に働きにきたいと思うだろう』という驕りがあるゆえでしょうね。でも現実を見れば’10年に中国にGDP世界2位の座を明け渡し、今後も巻き返せる可能性はゼロ。韓国や、今後急成長が見込まれるマレーシアやインドネシアと比べても、アジア経済における日本の経済的存在感は今後低下していくことは必至なのです」

 雇用統計や貿易統計に加えて、政府効率、ビジネス効率、インフラ、マネジメント慣行といったさまざまな視点から調査を進めた「国際競争力ランキング」(スイスのビジネススクールIMDが6月に発表)でも、日本のランクは63か国中30位で、中国(14位)はもちろん、韓国(28位)やタイ(25位)よりも評価が低いという結果になった。

<国際競争力ランキング>

1位 シンガポール

2位 香港

3位 アメリカ

4位 スイス

5位 アラブ首長国連邦

6位 オランダ

7位 アイルランド

8位 デンマーク

9位 スウェーデン

10位カタール

11位ノルウェー

12位ルクセンブルク

13位カナダ

14位中国

……

25位タイ

26位サウジアラビア

27位ベルギー

28位韓国

29位リトアニア

30位日本

……

63位ベネズエラ

「日本はもはや憧れの国ではない」

「こうした指標から見ても『貧しいアジア諸国から憧れの日本に働きにいく』という構図が過去のものであることは明らか。不動産ビジネスを展開する中国人など、資金力のない日本人に代わって、資金力と商才のある中国人が日本でビジネスを展開しているという構図です」

「日本はもはや憧れの国ではない」という現実を踏まえ、そのうえで外国人が働きやすい環境づくりを目指していくことが、日本が生き延びる道なのだ。

【岩崎博充氏】

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