東北を訪れる外国人の旅行客数が東日本大震災前の水準まで回復しつつあることが分かった。観光庁によると、2015年上半期(1~6月)の東北6県の外国 人延べ宿泊者数は23万4870人で、10年同期(23万3220人)を上回った。円安やビザ発給要件の緩和などで全国的に外国人旅行客が急増し、東北に も波及した形だ。
◎秋田や福島は苦戦
東北に宿泊した外国人客数の年間推移はグラフの通り。15年上半期は10年通期の4割以上に達した。下半期に含まれる秋の紅葉シーズンは1年で最も外国人客が増えることから、通年で震災前水準に戻るのはほぼ確実とみられる。
15年上半期の各県別は表の通り。青森、岩手、宮城、山形の4県が震災前を上回った。秋田と福島は大きく下回った。
10年の約1.9倍に増えた青森では、北海道と合わせて周遊する外国人観光客のほか、スキー客などが増えた。県誘客交流課の担当者は「癒やしや伝統文化の体験を求めて来る人が多い。来年3月の北海道新幹線開業をさらなる誘客に生かす」と意気込む。
震災前を下回る2県のうち福島は原発事故の風評被害に加え、知名度不足が課題。県観光交流課の担当者は「例えばタイでは県産品も人気で震災の影響はほとんどないが、観光地として認知されていない。観光資源のPRを強化しなければならない」と説明する。
秋田は10年の約6割にとどまるが、10年は県内で撮影した人気韓国ドラマの効果で、韓国人旅行客が急増する特殊事情があった。県観光振興課の担当者は「原発事故の風評被害は根強いが、韓国や台湾からの旅行客は回復してきている」と話す。
観光庁によると、15年上半期に日本に宿泊した外国人は延べ2923万6230人で、10年同期(1272万8010人)の約2.3倍。東北が国内全体に占める割合は0.8%と依然として低い。
東北観光推進機構の紺野純一専務理事は「全国的にみると東北の客数はまだまだ。ブランド力を高め、東北が一体となって誘客に取り組んでいく必要がある」と気を引き締める。