外国人旅行者が本当にお金を落とす都道府県はどこか。意外な県での意外な消費行動を調査する。(出典:文藝春秋オピニオン 2018年の論点100)
【表1】訪日外国人旅行者の基本データ
表1は訪日外国人旅行者に関する基本的な資料で、訪日外国人旅行者数は年間2400万人を超える(2016年)。外国人旅行者の国内での旅行消費額は約3兆7000億円、旅行客ひとり当たりの旅行中支出は約13万円と推計される。表2(次ページ)の訪問率は、実際に訪日した旅行客がどの地域を訪れたか、その割合をまとめたものだ。各都道府県への訪問率と旅行消費単価を比較し、実際の旅行客がどこでお金を使っているのかを考察する。
出典「文藝春秋オピニオン 2018年の論点100」
単価の高さNo.1は「北海道」
北海道千歳市、支笏湖氷濤まつり ©共同通信社
注目すべきは、北海道の旅行消費単価と訪問率の高さだ。旅行中支出約13万円のうち、北海道を訪れた旅行客は同地で半額以上の約6万6000円を消費する。訪問率は9%を超えており、北海道は、「単価の高いお客様」が多く集まる、まさに儲かる観光地といえる。他県と比較して旅行消費単価、訪問率が高い沖縄県も同様のことがいえるだろう。アジア諸国に近い福岡県も旅行消費単価はわずかに低いが、訪問率は北海道を上回る。
京都・奈良が苦戦の理由は
京都・伏見稲荷大社は外国人旅行者でごった返すが
一方、京都府は訪問率が非常に高いが、旅行消費単価は東北各県を下回る。日本人の京都旅行は高級旅館や老舗料亭を利用するイメージだが、外国人にとってはそれらへのアクセスが困難なのかもしれない。さらに古都として同様の属性を持つ奈良県は都道府県別で最下位の旅行消費単価である。関西圏を訪れる外国人は、宿泊や飲食、お土産購入などの消費は大阪府で、京都、奈良では寺社参拝と目的を区別していると推察される。
富士山でどれだけ消費するか
©三宅史郎/文藝春秋
外国人観光客から人気の高い富士山を擁する静岡県、山梨県は富士登山者と考えられる訪問率が比較的高いものの、彼らが同地で消費しているかといえば、そうともいえないようである。静岡県では、約1万8000円、山梨県では1万円を割り込んでいる。
国内消費の中心である東京都は、旅行消費単価、訪問率いずれもきわめて高い。羽田空港と千葉県の成田空港から一気に旅行客を集め、都内で消費させるという構造だ。東京都の最大の強みは、銀座、秋葉原、新宿など大量消費の拠点が複数あり、鉄道網や旅行者が求めるWi-Fiネットワークといったインフラが整っている点といえるだろう。
【表2】訪日外国人がお金を落とす県ランキング
出典「文藝春秋オピニオン 2018年の論点100」
(「文藝春秋オピニオン 2018年の論点100」編集部)