外国人観光客に人気「ロボットレストラン」「カプセルホテル」……日本人には意外

 2020年に五輪・パラリンピックが開かれる東京。海外への魅力発信は大きな課題だが、実は、東京では意外な場所が外国人観光客に人気なのだという。女性ダンサーとロボットが共演する歌舞伎町の「ロボットレストラン」や、ハチの巣のような形のカプセルホテルが「クール(かっこいい)」なのだそうだ。人気キャラクター「ハローキティ」で埋め尽くされたホテルの部屋も評判を呼んでいる。東京の魅力は、東京に生きる人々が気づかないところにあるのかもしれない。
 近未来を描いた米国のSF映画「ブレードランナー」(1982年公開)の舞台のモデルになったとされる眠らない街・歌舞伎町。無秩序にネオンが輝く巨大な歓楽街の一角で、ひときわ目立つ建物が、2年前に誕生したアミューズメント型飲食店の「ロボットレストラン」だ。
 「総開発費100億円」をうたって誕生したこのレストランは、ステージを中央にはさむように座席(計132席)を配置。酒や食事を提供するとともに、近未来形のロボットとまばゆい衣装をまとった女性ダンサーが共演するショーが楽しめるようになっている。
 ショーの内容は極めて個性的だ。歌舞伎役者風のメークをした男女が電飾ギラギラの山車(だし)に乗って和太鼓をたたいたかと思えば、鳥居に腰掛けた天狗がエレキギターを弾き鳴らす。続いて始まるのは、ロボット同士のボクシング…。身長3メートルはあろうかという巨大生物ロボットに女性ダンサーがまたがり、未来からの謎の侵略者と戦うというストーリー仕立てのショーもある。
 当初は「ガンダム世代」と呼ばれる30~40代の男性客を主なターゲットとし、「ロボットと若い女の子を絡ませたら面白そう」(広報担当者)と誕生した。
 だが、日本人客の入りは思ったほど伸びず、代わりに欧米を中心とした外国人観光客が集まるように。ネットで話題が広がり、各国の海外メディアがこぞって紹介した。今では外国人の割合は全体の6~8割に上るという。
海外の映像クリエイターらも来店
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 同店にはこれまでに、映画「シザーハンズ」で知られるティム・バートン監督(米国)や、テレビドラマ「LOST」シリーズのJ・J・エイブラムス監督(同)ら映像クリエイターが来店。音楽界からは、米人気歌手のケイティ・ペリーさんや、英ロックバンド「ブラー」のメンバーらも訪れた。「これらの方々は名前を出すことの承諾を得られた方で、ほかにも大勢の海外セレブがお忍びで訪れている」(広報担当者)という。
 ジブリ映画が好きという英国人、ジェームス・タタソールさん(38)は新婚旅行で来日し、「日本といえばロボットでしょう。グーグル検索で見つけて、面白そうだと思った。ロンドンにも劇場はたくさんあるが、こんなショーは初めてだ」と満面の笑み。
 同僚に連れられて来たというスイス人男性、ジュリアン・ネルシエさん(31)も「コスチュームロボットやエレクトリックを使ったところが日本らしい」と話した。
 広報担当者は「和太鼓や、(ショーや衣装などの)和柄っぽい部分に『カワイイ』が加わっている。世界を探してもほかにはない日本らしさがウケたのではないか」と話す。
ホテルの「キティちゃん部屋」に1人で宿泊する海外の男性も
 サンリオを代表するキャラクター「ハローキティ」は、日本だけでなく海外でも人気。グッズの愛用者は「キティラー」と呼ばれ、クールジャパンを代表するキャラクターの一つだ。米女優のキャメロン・ディアスさんや歌手のアヴリル・ラヴィーンさんら、海外ではセレブのファンも多い。
画像 京王プラザホテル多摩にオープンした「ハローキティルーム」。外国人観光客にも人気だ(京王プラザホテル提供)
 京王プラザホテルは11月1日、東京・西新宿と多摩センター(東京都多摩市)に、ハローキティをモチーフとした宿泊ルーム計12室を新設。公式フェイスブックを通じて英語、タイ語で情報発信したところ、「kawaii!」などと評判を呼び、宿泊客の約半数を外国人が占める人気スポットになった。
 「家族連れや女性の利用が中心ですが、一人で宿泊される海外の男性の方もいます。まさかここまで短期間に人気が出るとは」と広報担当者も驚きを隠せない。
 壁一面にハローキティの絵が描かれ、ドアに赤いリボンの飾りがあったり、鏡にキティちゃんのサインが書かれていたりと部屋によって装飾はさまざま。
 オープン後、ドイツのテレビ局が取材に訪れたほか、米ニューヨーク、香港、台湾、イタリアなどの各メディアからも問い合わせが相次いだ。
 外国人観光客の多く集まる新宿と、テーマパーク「サンリオピューロランド」がある多摩センターという立地も奏功。「ピューロランドを訪れたまま、宿泊される熱烈なファンも多い」という。
カプセルホテルは「宇宙船みたい」
 日本人にとって決して珍しくはないものが海外から「クールだ」と賞賛を浴びている好例が、カプセルホテルだ。歌舞伎町にある創業32年の老舗カプセルホテル「グリーンプラザ新宿」。出張のサラリーマンや終電を逃した人々などのオアシスとして愛され続けているが、4、5年前から外国人客が増えだした。
 広報担当者によると、人気の理由は価格の安さに加え、海外にはない独特な業態にある。「ハチの巣の中にいる幼虫になった気分」「SF映画に出てくる宇宙船みたい」。外国人利用客からはそんな感想が続々と寄せられるのだという。
 長期宿泊するバックパッカーから、1泊だけ“体験”する観光客まで利用の形態はさまざま。
 「働きバチのように働く日本人が寝る場所というイメージの一致」「近未来を彷彿(ほうふつ)とさせる形態の客室」などが外国人客の心をつかんだとみられ、広報担当者は「カプセルホテルを日本の文化の一つとして捉えているようだ」と分析している。
 グリーンプラザ新宿での外国人客数は、平成25年度が前年度比約38%増、今年度も11月までの時点で前年度1年間の約2倍に達するなど、現在も増え続けている。
 これまでに予約サイトや館内の案内表示などの多言語化を進め、英語を話せるスタッフも増やしたが、広報担当者は「まだ十分に対応できる態勢が整っていない」と説明。現在も外国人客はどんなに多いときでも、全客室数(593室)の1割程度までしか受け付けていないという。
 今夏には、荷物が多い外国人客らのために36室をつぶしてクロークを設置。また、客室での無線LANサービス「Wi-Fi(ワイファイ)」整備などを進め、受け入れ態勢の強化を進めている。
 経費はかさむが、「東京五輪に向けて、来日する外国人は増える。今後の伸びしろを考えたら無視できない」(広報担当者)と意気込んでいる。

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