誰でも発症する可能性が…
食物アレルギーは子どもの病気だと思われがちですが、実は大人になって発症する人が増えています。大人の場合、突然発症することが多く、しかも、それまで普通に食べてきていたものがアレルゲンとなります。大人の食物アレルギーについてお話ししましょう。
◆食物アレルギーの原因は、主に食品に含まれるたんぱく質です。免疫がそれら原因物質を「異物」と判断すると抗体が作られ、その抗体の反応によって発症するのです。これまでアレルギーを起こしたことがない人や、アレルギー体質と言われたことがない人でも、突然発症する可能性があります。
◆なぜ、突然発症するのでしょうか。少量のアレルゲンに継続的に接触していると抗体が蓄積されていき、一定量溜まった時点でせきを切ったようにアレルギー反応が出ると考えられています。また、もともと特定の食品にアレルギーを持っていても、はっきりした症状が出ないために食べ続けてしまい、ある日強いアレルギー症状が現れるケースもあります。
◆子どもの食物アレルギーは、多くの場合、卵、牛乳、小麦が原因です。一方、大人は、より幅広い種類の食品が原因となる傾向があります。よく知られているのは、果物や野菜、小麦、エビやカニなどの甲殻類、ナッツ類などです。なお、果物の場合、生で食べたときに発症する場合がほとんどで、加熱や加工されたコンポート、ジャム、缶詰などでは発症しないこともあります。
◆果物や野菜のアレルギーは、特定の花粉症と併せて発症することがあるのも特徴です。スギやヒノキの花粉症とトマトアレルギー、ブタクサとメロン・スイカ・キュウリなどのアレルギー、ハンノキやシラカバとリンゴ・モモ・ナシ・イチゴなどのアレルギーといった組み合わせです。アレルゲンの花粉に含まれるたんぱく質と、果物や野菜に含まれるたんぱく質が似ているためだと言われています(口腔アレルギー症候群(OAS))。
◆また、花粉症ではありませんが、ゴム製品などのラテックスアレルギーとバナナ・アボカド・クリのアレルギーの組み合わせも知られています(ラテックス・フルーツ症候群)。
◆最近、話題になったのは、ダイビングやサーフィンをする人に納豆アレルギーが多いという現象。これは、ダイバーやサーファーが、納豆のネバネバ成分と同じ物質を含むクラゲの触手に何度も刺されているうちに、アレルギーを持ってしまうためだそうです。
◆また、まれに小麦や甲殻類など特定の食品について、食べただけでは発症しないけれど、食べた後に運動することで運動誘発アナフィラキシーを起こすケースもあります(食物依存性運動誘発アナフィラキシー(FDEIA))。このほか、石けんや化粧品に含まれる小麦由来の成分などが、皮膚や粘膜から吸収されてアレルギーを起こすこともあります。
◆食物アレルギーの症状は、皮膚のかゆみ、口の中のイガイガ、くしゃみや鼻水、腹痛、下痢、吐き気などです。食物アレルギーが疑われたら、早めに皮膚科やアレルギー専門医を受診することが大切です。医師に、何を食べたか、口にしてからどのくらい経過して、どんな症状が出たか、どんな時に発症したか、運動はしていたかなどを詳しく伝えてください。
◆血液検査、皮膚検査などを行い、どの食品に対して抗体が高くなるのか調べます。必要に応じて、特定医療機関では疑わしい食品を一定期間避けることで症状が改善するかを見る食物除去試験や、逆に原因と考えられる食品を少量食べさせて症状の変化を見る食物経口負荷試験が行われます。
◆大人の食物アレルギーは、いったん発症すると治すことが困難です。アレルギーがあるとわかったら、その食品を避けることが必要です。予防として、同じ食品を毎日食べることはせず、食事のバリエーションを豊富にしておくとよいでしょう。
◆また、免疫が弱まるとアレルギーを起こしやすくなるので、疲労を溜めすぎず睡眠時間を確保する、散歩やストレッチなど無理のない運動を習慣にする、ストレスをできるだけ回避するなど、生活習慣を整えることが大切です。
(監修:はくらく耳鼻咽喉科・アレルギー科クリニック院長 生井明浩)