大人3人15分で完成 「段ボール診療室」 福島、被災地の知恵

新型コロナウイルスの感染拡大を受け、工具なしですぐに組み立てられる段ボール製簡易型診療室の需要が、医療機関で高まっている。主に感染疑いのある患者を、他の患者と分けて診察するための利用を想定。開発したのは東日本大震災の被災地、福島県の老舗段ボール製造企業だ。「被災時の教訓を契機に生まれた」(開発者)商品が、感染拡大防止に一役買っている。
 須賀川市の神田産業が開発した簡易型診療室は、段ボール表面に強化処理を施したパネルを組み合わせるつくりで、大人3人が15分ほどで完成させられる。幅3メートル、奥行き2メートル、高さ2.2メートルの広さで、天井部分もあり、ウイルス拡散を防げる。
 契機となったのは、震災と東京電力福島第1原発事故。神田雅彦社長らは避難所に段ボールを寄付したが、寒さ対策で床に敷く程度しか用途がなかった。「段ボール素材はもっと役立つはず」との思いから、商品開発に着手した。
 医師の助言を取り入れ、清潔な環境を保つための清掃のしやすさなどに工夫を凝らした。病原菌やウイルスで汚れた場合、比較的簡単に廃棄できるのも利点だ。
 2016年の熊本地震では、熊本県宇城市の避難所に授乳室などとして設置されたほか、18年の西日本豪雨では岡山県倉敷市で、仮設トイレ設置用の空間として活用。昨年10月の台風19号では、浸水被害を受けた本宮市の病院で使われた実績がある。神田社長は「さまざまな場面で使用できる。現場の苦労を軽減する一助となればうれしい」と話している。

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