宮城県は新年度、県内で大地震が発生した際の被害を分析する「第5次地震被害想定調査」に着手する。1978年の宮城県沖地震を機に始まった第1次(1984~86年)から不定期で行う調査の最新版で、東日本大震災後は初めて。調査期間は3カ年で、2023年度末に報告書をまとめる方針。防災対策の基礎資料として、市町村のハザードマップづくりなどに活用してもらう。
震災の被災地でインフラ復旧や市街地形成が進んだほか、県の津波浸水想定区域の策定が21年度内に完了する見通しを踏まえた。第4次(2010~11年)は、震災の影響で中間報告で終了。完全な形で調査できれば、第3次(01~03年)以来となる。
震災後に変化した地形や地質、地盤などの環境条件を整理。震災後の定住人口や建物の種別、ライフラインといった社会条件を組み合わせ、地震による揺れや津波、液状化といった被害を予測する。
想定地震は、11年の大震災と同規模とする見込み。平均約38年周期の宮城県沖地震に加え、同地震が他の地震と連動するケース、仙台市中心部を走る「長町-利府線断層帯」が改めて議論される可能性がある。
外部の有識者らを交えた専門部会を設置し、具体的な進め方を検討する。県は21年度一般会計当初予算案に関連事業費として1669万円を盛り込んだ。
沿岸部は、道路や橋、防潮堤といった震災後のハード整備が一段落したが、街並みや定住人口は激変した。第4次まで積み重ねた調査結果の修正にとどまらず、一からやり直しが必要な地域も少なくない。
県の担当者は「今後の地域防災に直結する重要な調査。きちんと分析を進め、県民の自助共助につなげたい」と話す。