大学ランクに異変 明大1位躍進

【大学ナビ】
 日本の大学数が780校(うち私立が599校)に達した、との文部科学省の速報を、関係者は重く受けとめた。大学側は、生き残りをかけ、高校生へのPR・働きかけがさらに過熱しそうだ。明治大学が志願者数で2年連続日本一になったのも、徹底したイメージ作戦の成果という専門家らの分析を交え、様変わりする高校生の受験環境をみた。
 リクルート『カレッジマネジメント』誌は毎年、「高校生に聞いた 大学ブランドランキング」を調査している。〈表〉の右側のランキングは先ごろ発表された今年(第4回)の調査結果。左は2008(平成20)年第1回である。それぞれ、関東エリアの高校3年生を対象に「翌春の受験で、どの大学を選ぶか」を聞いた。
 ◆「高倉健」が「向井理」に
 明大は第2回、つまり2010年春の卒業生のときに早稲田大を抜き、以後、3年連続でトップとなった。実際に明大の志願者数が早大を抜き1位になったのは過去2年間だが、ランキング調査は、その流れをいち早く捉えていたことになる。
 明大躍進の理由について同誌の小林浩編集長は、「都心から郊外へ移転する大学が多い中で、神田駿河台に残ったこと、さらに大学側が意識的にイメージ転換を図ったことが大きい」という。
 「学園紛争の名残のような立て看板を撤去し、リバティタワーを中心にきれいな学園を目指す。入試改革にも力を入れ、地方の受験生に便宜を図る一方、各地でイメージアップにつながる事業も展開している」
 今春の創立130周年に合わせ作戦に力が入り、従来のバンカラ色は一掃された。
 明大のOBといえばプロ野球の星野仙一、俳優の高倉健、タレントの北野武…だったのが最近は、俳優の向井理、北川景子、サッカーの長友佑都といった「さわやか系」の活躍が目立ち、それが大学のカラーにもなりつつあるようだ。
 ◆「あこがれ」も経済の壁
 経済事情も後押ししている。教育、薬学、看護など不況に強い資格志向や授業料が比較的安い国公立の進出も、ランキングの変化に出ているが、私大では、早大、慶応大よりも「MARCH」と呼ばれる各校が堅調で、これにも経済不況が関係している、という。
 早大、慶大は受験生の「あこがれ校」で従来、合否はともかく受験した。「記念受験」などと呼ぶそうだが、最近は、合格しないなら受験料が損だ、という受験生が増えた。その結果「MARCH」の中でチャレンジしがいのある明大に流れる傾向がある、と小林編集長は分析する。
 偏差値重視にも変化がみられる。大卒なら100%就職ができた時代は去り、レベルの高い大学でも、仕事がなかなか見つからない。入試の形態も多様化し、推薦やAO入試が入学者の半数を占める。年内に入学先を決めてしまう高校生も多く、偏差値のレベルを見つつも「自分に合った大学」を優先する傾向も強まった。
 ◆存在感高める「機能分化」
 教育問題研究家の木村誠氏によると、大学側には機能分化ともいうべき現象が顕著だ。学問の府としてのアカデミズムを追求する研究大学、社会のニーズに合った職業人を育成する大学、広く社会人としての教養を身につける大学などに分かれつつある。
 それは、1960年代までのように進学率が20%台で、模試や高校の成績データ、先生や先輩のパーソナル情報で、大学選びが十分機能していた時代は終わり、大学側もセールスポイントを積極的にアピールせざるを得なくなった結果-と木村氏は指摘する。
 偏差値だけで評価を下す時代は過去のものになった。しかし一方で、高校生の進路選択に役に立つ独立した評価機関があるわけでもない。やがて800校にもなろうという大学間の競争ばかりが目立ち、高校での進学指導が追いつかない矛盾も深まりそうだ。

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