大手住宅メーカー、団塊向けシニアビジネス加速

 大手住宅メーカーが有料老人ホームの自社運営に乗り出したり、成長が見込まれる高齢者向け賃貸住宅に力を入れるなど、シニアビジネスを本格化させている。今年は団塊世代の“大量退職元年”。その団塊世代が65歳以上になり、需要のピークを迎える平成27年前後に向けて先手を打ち、実績やノウハウの蓄積を図る狙いがあるようだ。(橋本亮)

 住宅メーカーではこれまで介護施設や有料老人ホームなどの建設を中心に行ってきたが、昨年から施設の自社運営や運営会社との提携を始めるケースが増加している。

 住友林業は昨年11月に介護施設の運営事業に乗り出すため、専業の子会社「スミリンライフアシスト」を設立、静岡市で診療所などを併設する有料老人ホームの建設に着手した。サービスを含めたソフト面を自社運営することによって、「入居者のニーズや提供するサービスに合った施設の建設ができ、住宅メーカーとしての強みが発揮できる」(松原徹・スミリンライフアシスト取締役)利点が生まれるという。

 積水ハウスも一昨年7月、有料老人ホーム運営会社のメッセージと共同出資で新会社「積和サポートシステム」を設立。双方のノウハウを結集した介護付き有料老人ホームを「Sアミーユ」のブランド名で首都圏を中心に展開していく予定だ。

 また、昨年4月の介護保険法改正で、保険の給付を抑えたい各都道府県が保険の適用対象となる老人ホームの新設を制限し始めたことを受け、注目を集めているのが高齢者向けの賃貸住宅だ。

 高齢者向け賃貸住宅は介護保険が適用されないものの、管理人が常駐していたり、段差がないなどバリアフリー設計がなされているのが特徴。高齢者向けの食事メニューや介護サービスも有料で利用できる。施設への入居に抵抗があったり、現在は元気だが将来に不安がある人を中心に急速にニーズが高まっている。

 ミサワホームは昨年春に自社が運営する介護付き有料老人ホーム「マザアス南柏」で培ったノウハウを生かした高齢者向け賃貸住宅を北海道伊達市で2カ所オープンさせた。今後は都内での建設を予定している。「需要の高まりもあり、土地のオーナーにも資産の有効活用策として関心が高まっている」と同社資産活用推進部の石原正弘マネジャー。パナホームも大阪府で高齢者向け賃貸住宅を運営するほか、全国で10件の高齢者向け賃貸住宅を建設。「郊外などの自宅で一人暮らしができなくなった高齢者の受け皿になる」(エイジングライフ部)とみて事業の拡大を図る考えだ。

 国土交通省では高齢者向け賃貸住宅の登録制度のほか、高齢者の自宅を借り上げ、子育て世代に貸し出す「高齢者の住み替え支援事業」に力を入れており、住宅メーカーも事業に参画して将来のビジネス化に向けたノウハウの集積に躍起。需要のピークを迎える平成27年前後に向けた動きはますます加速しそうだ。

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