大手銀でペーパーレス化加速 三菱東京UFJは年1.6億円節約

大手銀行が住宅ローンの貸出伝票や現金自動預払機(ATM)の記録用紙など、国内本支店で使う書類のペーパーレス化を加速させている。用紙代や人件費などのコスト削減を徹底するのが狙い。企業の資金需要が低迷する中、銀行は小口金融(リテール)の強化を迫られているが、住宅ローン金利の低下などで収益が圧迫されており、ペーパーレス化を通じて少しでも利益をひねりだしたい考えだ。
 三菱東京UFJ銀行は国内の全本支店約600店舗で8月、住宅ローンなどの貸出伝票のペーパーレス化を本格的に導入した。企業向け貸し出しが中心だった電子システムを個人向け貸し出しにも使えるように開発し、ローン審査後の紙伝票による起票作業を電子処理化した。
 この結果、「年間で約40万枚の伝票類をなくすことができ、保管事務や保管スペースも不要になる」(同行)といい、年間1億6000万円分の人件費や用紙代などをカット。行員の顧客応対時間を増やすことができ、サービス充実にもつながった。
 さらに、ATMの取引記録用ロール紙を廃止し、サーバーへの電子保管に切り替えた。同行は「今後も経営効率の向上に努めたい」としている。
 三井住友銀行も、全国本支店にある約3800台分のATM取引記録用ロール紙の電子化を4月に実施し、A4用紙換算で年間4100万枚分の削減を実現した。
 支店では、口座開設時の本人確認書類などを専用機械で読み取って電子データ化し、保管するシステムを採用。「紛失や誤廃棄、被災時のデータ損失といった情報管理面でのリスクも解消できる」としている。
 みずほ銀行も、ATM取引記録用ロール紙のペーパーレス化を「費用対効果を勘案しながら、検討中」という。
 銀行はリテール業務に注力しているが、長期金利の低下を背景に、稼ぎ頭の住宅ローンは「もうけの少ない変動金利型が多くを占めている」(大手銀行関係者)のが実情。利益の上積みに向け、事務インフラの抜本的見直しを含めた効率化も今後迫られそうだ。(山口暢彦)

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