大清算の時代に突入した資本主義 (ゲンダイネット)

 日本のものづくりを代表する家電製品のテレビが、大手メーカーの足を引っ張っている。パナソニックは、テレビと半導体事業の不振が負担となり、12年3月期の連結最終損益を4200億円の赤字に下方修正。ソニーも、テレビの販売不振で連結最終損益が900億円の赤字になると発表された。数年前なら考えられなかった事態。それが現実に起きている。
 テレビは自動車と並び、工業国でやってきた日本の得意手だ。画質、機能、価格、耐久性に優れ、世界市場を席巻した。しかし、海外にも工場を構え、現地生産を始めたことで、テレビづくりのノウハウが流出。日本メーカーのものと同じような工場が、現地にボコボコとできて、似たような商品が次々と出荷されるようになった。
 日本企業が工場を構える中国や東南アジアでは、かつての日本のような終身雇用は定着していない。労働者は、少しでも条件がいい方にあっさりと転職する。現場レベルの技術や知識の持ち出しを食い止めるのは困難だ。
 こうなると、現地資本の後発組が強い。日本企業は価格で太刀打ちできなくなる。製品の総合力は日本ブランドの方が上だとしても、消費者は、求める機能があれば安い方を買う。その結果、日本企業のテレビ販売はメタメタとなり、大赤字を計上することになったのだ。
 かつての米国も、いまや工業力はゼロに近い。日本も同じ道をたどりそうだ。TPPで関税がなくなっても、為替で円高基調が続けば、効果は消える。焼け石に水だ。
 やはり、こうした現象は従来型の資本主義の終わりを示しているのだろう。国民経済のあり方を論じてきた資本主義の経済学は、グローバル化で国境がなくなり、通用しなくなっている。資本主義は歴史的な大清算に突入しているのだ。
 高度に発展した商品経済は残るし、世界中でモノを売り、勝負する状況は変わらない。だが、国境の存在を前提にした資本主義は、通用しなくなる。保護主義的な枠組みを残している発展途上国が世界でノシ上がっていくのは、新陳代謝のようなものだ。資本主義の常識とは違う。
 そんな時代に日本の家電メーカーが生き残るのは、並大抵のことではない。

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