大阪のどケチ精神が生んだ新土産「THE TAKO焼CHAN」

売れ残ったたこ焼きを、丸ごと揚げて“おかき”にした商品がじわじわと人気を集めている。大阪府内の老舗店が試行錯誤を続け、今年3月にようやく 完成。賞味期限が約10カ月もあるとあって、訪日外国人が大量購入することも。先月下旬からは大手百貨店での販売も始まった。ナニワの新しい土産となりそ うだ。(芦田彩)

デパートでも販売開始

表面はカリカリ。軽く振ると、中に入っているタコが、カラカラカラッと音を立てる商品「THE TAKO焼CHAN」(450円)。5個入りで、味はソース、わさびマヨネーズ、梅、カレーの4種類。

製造から梱包まで全て手作業のため、数量限定で、3月11日からなにわ名物・いちびり庵本店(大阪市中央区)などで販売を始めた。発売から一週間で200 袋以上が売れる人気ぶりで、3月25~31日にはJR大阪三越伊勢丹でも販売。高級感のある木船に包装を変えて、外国客向けの通販サイトでも販売してお り、週に5~6件ほど国外から注文が入る。中国人がまとめて10袋買い求めていった例もあり、評判は上々だ。

商品を手がけたのは、大阪府 富田林市のたこ焼き店「開屋本舗」店主、開(ひらき)田(だ)早代さん(46)。販売から20分以上経ちロス商品になったたこ焼きを冷凍させたのち、特殊 なフライヤーで百度以下の低温を維持しながら約3時間かけて揚げる。味付けをしたら完成だ。

「高温で揚げると固くなってしまうし、低温で揚げるといつまで経っても揚らず、揚げ方の微調整に時間が掛かった。もったいないという大阪人の精神が、商品開発に挑むモチベーションとなり続けた」と苦労を語る。

1時間で250個以上のたこ焼きが無駄に…

開田さんは約20年前に同市内でたこ焼き屋の経営を開始。一番美味しい時期に味わってほしいため、焼き立てから20分以上経過したものは販売しないと決め たが、店舗周辺は人通りが少なく、オープン当初からロス商品が発生。多いときには、1時間で250個以上が無駄になった。ロス商品を減らすため、鉄板の上 に焼かれた状態のたこ焼きを減らしても、客から素通りされてしまい商売にならない。

「もったいないから、ロス商品になったたこ焼きを再び売ることができれば」。当時流行していた「だんご3兄弟」にあやかり、たこ焼き3個を串に刺して素揚げしたものを30円で販売するなどしてみたが、常連の子供たちが買っていくくらいで、広まることはなかった。

約5年前、お土産店に行き大阪のお土産を見ていたところ、“たこ焼き味”の商品は沢山あったのに対し、たこ焼きそのものの形をしているものはなかった。開 田さんは「ロス商品のたこ焼きを生かしたお菓子を作ったら、たこ焼きを生かすことが出来るし、大阪の新たな魅力発信につながるのではないか」と感じたとい う。

大阪人の「もったいない」精神

消費者庁によると、食べられるのに捨てられている「食品ロス」は国内で年間約500万~800万トン(平成22年度推計)にものぼり、米の年間収穫量に匹敵するという。開田さん以外にも、「もったいない」と感じた大阪人らが食品ロスを再生させる動きを起こしている。

関西人なら一度は口にしたことのある紅ショウガ天。伝承料理の一つで、梅干しをシソの葉を入れて漬けた際に残る梅酢を捨てず、ショウガを漬け込んで保存食にし天ぷらに活用されてきた。

中野物産(大阪府堺市)のロングセラー商品「中野の都こんぶ」は、売り物にならない昆布の切れ端をおやつ代わりに食べていた創業者が、「これに甘みをつけて売り出せないか」と考えたのがきっかけで昭和6年に生まれた。

開田さんは、飲食店などで提供されるような調理品が新たに調理品として生まれ変わるケースはなかなかないのではといい、「本来なら捨てられていた食品が生まれ変わるって素敵。駄菓子のような感覚で、いつでもどこでも食べられるようになれば」と話している。

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