大阪・関西万博がピンチです。パビリオンなどの建設が一向に進まず、「2025年4月の開幕に間に合うのか?」と危ぶまれています。僕は今回の問題には現在のわが国全体を覆う「無責任」「他人事」「働いたら負けかな」というマインドが大きくのしかかっていると思うのです。
具体的には、何かをやって自分のせいにされて評価を減点されるくらいなら、何もしないで減点を防いだほうがマシという心理と、その経済的合理性を指します。この考えは政府・与党だけでなく、官僚や地方行政、大企業から中小企業まで、多くの日本人に深く根を下ろしてしまった。
新規事業を企画して予定通りに進まなければ降格する一方で、何ら提案もせず日々淡々と目の前の業務をこなしているだけなら降格はない。
また、よほど大きな理由がない限り、役に立たないだけの人材を切ることもできないという組織事情があれば、責任ある立場に就かないメリットの方が、そうでない場合よりもはるかに大きい──。こうしたスタンスは大阪万博を仕切る組織内にもはびこっているようです。
通称、万博協会。正確には「公益社団法人2025年日本国際博覧会協会」が、今回の万博の意思決定機関ということになってはいます。しかし、協会の構成メンバーをみると、政府官僚の一部に近畿圏の企業代表や学術団体の理事などが相席しているものの、博覧会イベントや施設建設、土木などの専門家は不在。つまり、協会からの委託先が、実際にはパビリオンなどの企画推進を担っていたことは明白です。
■電通失いカオス状態
その委託先の組織とは電通でした。過去形になってしまったのは、すでに電通は現場を去っているからです。昨年、内部から逮捕者まで出した五輪談合の余波を受け、万博から電通は除外されています。
そうなると、電通の企画により集められた万博協会のメンバーたちも実際、誰に物事を相談すればよいのか分からなくなってしまう。同時に、すでに進行中の計画における指示や修正といった「注進」も誰が受けるのかも不明です。大将不在の「烏合の衆」が万博の意思決定機関の実情なのです。
広辞苑によれば「烏合の衆」とは〈規律も統制もなく、ただ寄り集まっているだけの集団。秩序のない人々の集まりや軍勢にいう。からすの集まりが無秩序でばらばらであることからきた〉とあります。もはや万博協会はカオス状態。次回は肝心の「工期」について考察していきます。