天気の変化が影響して体調が悪くなる「気象病」 気温差や低気圧が原因に

日中はTシャツ一枚でも汗が出るほど暑かったのに、夜になれば一気に気温が下がり、冷たい雨まで降ってくる—季節の変わり目は天候が変わりやすく寒暖差も激しい。都内在住の主婦・山口美香子さん(54才・仮名)は、ため息をつく。

【写真】気象病で体調を崩した人のイメージ

「最近、天気予報をチェックするのが憂うつです。気候が安定しない日は頭痛やめまいがひどくて、朝起きるのもしんどい。やる気も出ないし、仕事や家事を休みたいけれど、何か具体的な病名があるわけでもないから、周囲にも言えず、ひたすら耐える日々です」

 内科医で上本町わたなべクリニック院長の渡邊章範さんによれば、山口さんのように天気が理由で不調を訴える人が急激に増えているという。

「天候や気温の変化が原因で体調が悪くなる、いわゆる“気象病”に苦しむ人は、年を追うごとに増えています。特に女性はホルモンの影響もあり、こうした変化に反応しやすい。当クリニックでは、気温の変化が激しい日や雨の日に患者が増える傾向があるのですが、その3分の2は女性です」

7℃以上の気温差で体調不良に

 そもそもなぜ、天気の変化が体に影響を与えるのか。その理由の1つは気温差にある。寒暖差疲労外来のある、せたがや内科・神経内科クリニック院長の久手堅司さんが解説する。

「人間の体は、内臓や代謝などを24時間体制でコントロールする働きを持つ自律神経によって体温を一定に保っていますが、気温差が激しければその機能を酷使することになる。やがて対応しきれなくなると自律神経が乱れ、体内のあらゆる場所で不調が起こります。

 寒暖差には『1日の中における最低気温と最高気温の差』、『前日比、もしくは1週間くらいの期間での気温差』、『室内外の寒暖差』の3パターンがあり、いずれも自律神経の乱れの原因になります。特に暑いときは、室外の暑さと室内のエアコンによる冷えに注意が必要。目安として7℃以上の気温差があると、不調が出やすくなります」

 気象予報士の森朗さんは、今年は例年に比べて、特に気温差が激しいと指摘する。

「もともと初夏は気候の変化や寒暖差が激しいのですが、今年はその傾向が特に強い。実際、皆さんそれを肌で感じているようで、『明日の天気はどうなるの?』と例年以上によく聞かれます」(森さん・以下同)

 森さんによれば、気温差はもちろん、湿度と気温の組み合わせで決まる「体感温度」の差が激しいことも今年の天候の特徴だという。

「同じくらいの気温であっても、湿度の高さによって人間の肌が感じる温度感覚は大きく異なります。たとえば、気温も湿度も高ければ蒸し暑くて過ごしづらいと感じる人が多いですが、気温は高いが湿度が低ければそれほど不快感はない。

 反対に、気温も湿度も低ければ強く寒さを感じますが、気温は低くても湿度が高ければ少し冷えは和らぎます。こうした体感温度の差が激しいことも、体の調子に影響を及ぼしていると考えられます」

 寒暖差が起きる主な要因は、低気圧だ。

「低気圧は雨雲を伴うため、発生すると天気が崩れ、気温差も大きくなります。気温が上昇し、空気中の水蒸気量が多くなると、低気圧が発達しやすくなるので、世界的に温暖化が進む昨今、極端な気温差をもたらすような低気圧が増えることが予測されます」

 低気圧そのものも、不調の原因となりうる。

「気圧とは、空気がものを押さえつけるときにかかる圧力のことを指します。その重量は相当なもので、成人であれば平常時でも14〜16tもの気圧がかかっていますが、普段は体内から外に向かってそれを押し返す力があるためバランスが取れています。

 しかし気圧に大きな変動があればそのバランスが崩れ、体の状態に影響が出てしまう。エレベーターで高層階に上がると、耳に違和感を覚える人が多いですが、これも高所に行くと気圧が急激に下がるためです。気圧は上がるより下がる方が影響を受けやすく、実際にさまざまな研究によって低気圧が体調に支障をきたすことが明らかになっています」(渡邊さん)

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