いわて産業振興センターと岩手県一関市などに製造拠点を置く自動車用機器類開発の村上商会(東京)は、電気自動車(EV)に太陽光発電装置を付けて給電せずに走行する「無給電EVシステム」の実用化を進めている。同社によると、自動車メーカーが自社の車を太陽光で走らせる例はあるが、どのメーカーのEV車にも対応できる外付け型システムの開発は全国で初めてという。
「走る発電所」
システムは、太陽光発電パネルと、バッテリーに電気を送る装置などで構成。15~20キロ走れる通常型と、走行時に充電して25~30キロ走れる高機能型がある。航続距離を超え、エネルギーを太陽光発電で賄えなくなった場合はEV本来の電気を活用する。
EVの理念でもある地球温暖化対策を踏まえ、太陽光発電装置の後付け案を採用した。短時間のパソコン作業、スマートフォンのフル充電にも対応。災害時の利用を想定し、2026年度にも「走る発電所」のキャッチコピーで自治体などに売り出す。
経済産業省の中小企業向け補助事業を活用し、22年に開発を開始。現在、久慈市と一関信用金庫、いわて産業振興センターに試験車両計5台を順次配備して走行データを収集し、実用化に向けた課題を探っている。
27日には盛岡市内で試験走行会があり、産業振興センター理事長の佐々木淳副知事は「プロジェクトは3年目に入った。県内企業の開発支援を通じ、地域経済の活性化につながってほしい」と期待した。
村上商会の村上竜也社長は「短距離であれば充電なしで利用でき、真に時代にフィットした装置だ。将来的には海外での販売も視野に事業を進めていきたい」と語った。