政府は、太陽光パネルのリサイクルを義務化する方針を固めた。2010年代後半から増え始めた太陽光パネルの多くは30年代に耐用年数を超え、大量廃棄されかねないため、企業などにリサイクルを義務付けて環境負荷の軽減を図る。リサイクルせずに廃棄や放置した場合の罰則を設けることも視野に入れる。 【図表】2030年代に太陽光パネル大量廃棄の懸念
経済産業省と環境省が今月、新たな有識者会議を設置し、年内をめどに具体的なリサイクルの方法や、費用補助などの支援策をまとめる。来年の通常国会に関連法案を提出する。
太陽光発電は東日本大震災後、原子力発電や火力発電に代わるエネルギーとしての期待が高まり、急速に拡大した。22年度末には8500万キロ・ワットと、世界3位の導入量に上っている。
現在、太陽光パネルはリサイクルが義務化されておらず、撤去後は大半が埋め立て処分されている。主流のシリコン太陽電池パネルには鉛が使われているほか、カドミウムなどの有害物質を含むタイプもある。
耐用年数が20~30年と長いため現在は大きな影響は出ていないが、30年代後半に年17万トン以上が廃棄されるとの予測もあり、制度が未整備のままでは環境負荷が大きくなる恐れがある。
太陽光パネルから取り出したガラスやシリコンなどは再利用し、資源の有効活用を図る。有識者会議では、リサイクルしやすいパネルの回収方法を検討する。
海外では欧州連合(EU)が12年に使用済み太陽光パネルの回収・リサイクルを義務化した。米国では州ごとに規制が進む。中国では規制の検討段階という。
太陽光パネルのリサイクル義務化と合わせ、日本発の「ペロブスカイト太陽電池」の普及も後押しする。軽量で薄く、曲げられるのが特長で、ビルの壁面や車の屋根などに設置できる。しかし耐用年数が10年程度と太陽光パネルより短いため、リサイクル費用を一部補助し、循環サイクルを整えることも検討している。
原料となるヨウ素などは多くが国産品を調達できるため、経済安全保障の点でも重要視されている。国内外で大きなシェア(占有率)を占める安価な中国製太陽光パネルに代わる存在として育てば、世界市場をリードすることも可能となる。