太陽光・風力21施設が発電一時停止 東北電、初の再エネ出力制御

東北電力ネットワークは10日、再生可能エネルギー発電事業者を対象に、「出力制御」を東北6県と新潟県で初めて実施した。好天で太陽光の発電量が増え、供給過多になって大規模停電に陥るのを避けるための措置で、太陽光と風力の施設21カ所で発電を一時止めた。ただ制御量は前日見込みを下回り、再生エネ発電量を正確に予測する難しさが浮き彫りになった。

 東北電ネットは前日の9日、最大38万キロワットの電力が使い切れなくなると予測し、7県にある101の再生エネ事業者による対応を決定。10日は午前8時~午後4時、このうちの21施設が自ら稼働を止め、最大11万キロワット(午前11時半~正午)の発電を抑えた。

 出力制御には、前日の通知時点で稼働停止が確定する「オフライン制御」と、当日の電力需要や気象条件を踏まえて東北電ネットが遠隔操作で施設を止める「オンライン制御」がある。今回は全てオフライン制御で過剰分を吸収。東北電ネットは「最小限の制御で済んだ」と胸をなで下ろす。

 結果的に再生エネ発電量の見込みが過大だったため、最大38万キロワットとした電力の余剰予測を大きく下回り、21カ所で最大12万キロワットと見込んだ制御量も実際は11万キロワットにとどまった。東北電ネットは要因について「北の方で思ったより晴れず、太陽光の出力が伸びなかった」と話す。

太陽光発電量予測、つきまとう自然相手の難しさ

 再生可能エネルギーの出力制御は、せっかくの「自然の恵み」を無駄にしないためにも最小限に抑えるのが理想だ。その鍵を握るのは太陽光発電量の予測。東北電ネットは本年度、予測の強化を進めるが、それでも自然相手の難しさがつきまとう。

 出力制御は再生エネ事業者の売電機会を奪うことになるため、東北電ネットなど一般送配電事業者は制御指示を最小限にすることが期待される。気象予報などに基づく発電量予測の精度が低いと、予測が外れた場合に備えて制御量を多く担保する必要に迫られる。

 東北電ネットの太陽光発電の予測精度の推移はグラフの通り。電力需要が夏や冬ほどは多くないため出力制御の可能性が高い5月でみると、2019年は予測した発電量と実績値に5・0%の誤差があったが、検証を重ねて精度を高め、21年は3・0%の誤差に抑えた。

 さらに本年度は日射量予想を改善。管内の東北6県と新潟県の代表地点59カ所で予想していたのを、5キロメッシュの2200カ所と大幅に拡充した。気象予報も従来の気象庁データに欧米2機関のデータを組み合わせて精度を高めた。その結果、今年は5月で初の2%台まで誤差を減らせると見込む。

 ただ、10日の出力制御では前日の再生エネ発電量の見積もりが結果的に過大だった。地震の影響で管内に電力需給逼迫(ひっぱく)警報が発令された3月22日も、予測ほどは太陽光発電量が伸びず、当日になって急きょ利用者に節電を呼びかけた。予測精度が高まっても、天候の不確定要素を完全に克服するのは難しいのが現状だ。

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