奈良・春日大社が所蔵する太刀について、12世紀の平安時代後期につくられた「古伯耆(こほうき)」と呼ばれる最古級の日本刀だったことが分かった。春日大社が22日発表した。平安時代から武家に伝わる「伝家の宝刀」が、南北朝〜室町時代初め(14〜15世紀)に大社に奉納されたとみられ、日本刀の歴史を考える上で重要な資料として注目される。
日本の刀剣は、古代遺跡での出土品や正倉院宝物などにみられる反りのない「直刀」から、平安後期に反りなどの付いた現在の日本刀の形が成立。伯耆国(現鳥取県中西部)で作られた「古伯耆」などが最初期のものとされる。
刀は無銘で、刃の長さが82・4センチ。鞘(さや)などの外装は南北朝〜室町時代に作られた黒漆山金作太刀拵(くろうるしやまがねづくりたちこしらえ)とされる。大社によると、刃文の特徴などから古伯耆の中でも最古とみられる刀工「安綱(やすつな)」の作の可能性がある。このほかに古伯耆は十数点の国宝・重要文化財がある。東京国立博物館の酒井元樹主任研究員(日本工芸史)は「これだけ長寸の古伯耆で、外装も残っているのは珍しい」と話す。
太刀は1939(昭和14)年、宝庫天井裏から発見された12振りのうちの1振り。刀身がさびていたので詳細が不明だったが、2016年度から第60次式年造替(しきねんぞうたい)を記念して研磨したことで詳細が判明した。
刀は30日から、春日大社国宝殿で展示される。3月26日まで。問い合わせは大社(0742・22・7788)へ。(宮崎亮)