世の中には、女子には理解できないこだわりを持つ男たちが多く存在する。今回は、その中でも、特に女子に理解不能な「ラーメン二郎マニア」、通称「ジロリアン」の生態を紹介する。
◆マニアが使うラーメン二郎用語を紹介
念のため説明すると、ラーメン二郎は1968年に創業し(現在は本店・三田)、首都圏を中心に40店舗ほどがある。麺の上にモヤシ、キャベツ、チャーシュー等がうず高く盛られた異常なボリュームを誇る。
ジロリアン(ラーメン二郎の熱狂的ファン)の数は男性が圧倒的に多い。その見るからに食べきれないくらいのボリューム、入りづらい雰囲気。様々な理由がか弱い女性たちの足を遠のかせるのである。ラーメン二郎、そしてジロリアンはなぜ多くの女子に受け入れられないのか?
それは第一に、マニアたちの聖域感の深さにあると筆者は感じる。そこでまず始めに、女子たちが入り込めない聖域感の象徴とも言うべき「ラーメン二郎用語集」の基本をいくつか紹介する。
1.コール
ラーメン二郎では個人の好みでラーメンをカスタマイズできるトッピングシステムがある。ほとんどの店舗ではヤサイ、ニンニク、アブラ、カラメの4種類のトッピングがあり、コールにより多め少なめの調整ができる。(コール例:ヤサイニンニク←ヤサイとニンニクをトッピング、ヤサイニンニクアブラ←ヤサイとニンニクとアブラをトッピング、ヤサイ少なめニンニクアブラ←ヤサイ少なめトッピング、ニンニクとアブラは普通でトッピング)のようにコールする。二郎の基本中の基本用語であり、大学生が居酒屋でやる、あのうるさい掛け声と一緒にしてしまうとジロリアンたちが怒る。
2.「マシ」「マシマシ」
「マシ」とは、先ほどのトッピングをさらに増やしたいときに使う用語。(コール例:ヤサイマシニンニクマシ←ヤサイとニンニクを通常より多めにトッピング)など。「マシマシ」とは、通常の量の約2倍の量のトッピングのこと。(コール例:ヤサイマシマシアブラ←ヤサイ通常の2倍、アブラのトッピング)のようにコールする。この用語を使うとなんとなくジロリアンっぽいので、偽ジロリアンもよく使う用語。
3.全マシ
ヤサイ、ニンニク、アブラ、カラメ。すべてのトッピングをマシ(通常より多め)にするコール。量が多くなるので食べきれる自信がないと頼んではいけない。大食いジロリアンと、SNSで自慢したいだけの学生がよくやっている。
4.撃沈
その名の通り、撃沈する(食べきれない)ことである。ただでさえ量の多いラーメン二郎。そのため、特に素人ではこの撃沈をすることが多い。前述したマシやマシマシをして撃沈することはご法度である。撃沈する人間をジロリアンとは呼べない。SNSで自慢したいだけの学生がよくやっている。
5.ロット
ラーメン二郎では、ラーメンを一度にまとめて調理しており、この行程をロットと呼ぶ。各店舗により一度のロット数は異なるが、まとめて複数分を調理するため、同じロットになった客とは同じタイミングでラーメンが提供される仕組みとなる。ちなみに、ロット内でリーダー格とされる人間(ロットマスター)は確実にジロリアンである。
6.ロット乱し
食べるのが遅い人を指す用語。一度にまとめて調理を始めるラーメン二郎。そのため同じロットの中で食べるのが遅いと、すでに作り始めている次のロットを乱してしまうことになる。一時、このロット乱しで店員にとがめられてしまった客がネットで話題となったことがある。ロットを乱すとジロリアンに鼻で笑われる。
7.聖地
全国に複数の店舗があるラーメン二郎。その本店でもあるのが三田にある「ラーメン二郎三田店」だ。この三田店のことを「聖地」と呼ぶ。慶應大学の前にありすごく並ぶが、品のよさそうな慶應大生はあまり見かけない。聖地に行ったことがなければジロリアンとは呼べない。
8.天地返し
簡単に説明すると、ヤサイの中に埋もれた麺を持ち上げる技。食べやすいように、ヤサイを汁に馴染ませるため、等の理由からこの技を使うジロリアンが多い。汁がこぼれないようにするなど、ある程度のテクニックが必要となり、これが出来なければジロリアンとは呼べない。
9.インスパイア
ラーメン二郎の系列ではないが、二郎のようなラーメンを出す店舗。最近ではこのインスパイアも増えてきており、中には二郎らしからぬ小奇麗な店舗も誕生している。インスパイアの存在を認めないジロリアンもいるが、ジロリアンでない人からするとその違いが分からない。
10.ミタジ、イケジ、メグジ等…
ミタジ→三田店 イケジ→池袋店 メグジ→目黒店。このような省略された呼び名で呼ばれる店舗が多く存在する。付き合って日の浅い彼氏とのデートで「この後どうする?イケジでも行く?」と言われたら、それは夜景の見えるレストランへの誘いではなく「ラーメン二郎」への誘いなので浮かれてはいけない。
◆ジロリアンがやりがちなごと
ここからは実際にジロリアンがやりがちなことをシチュエーションに沿って紹介する。
◆1.おすすめのラーメン屋を聞かれて、二郎の店舗を言っちゃう。
とある合コンにて。麺子(25歳・仮名)は、目の前に座る爽やかな笑顔が印象的の商社マン、三田次郎(27歳・仮名)に一目ぼれをした。しかし、この三田という男、週に4回は二郎へ通う生粋のジロリアンなのであった…。
以下、麺子と次郎の会話。
麺子「三田さん、好きな食べ物はなんですかぁ?」
次郎「ラーメン!!(即答)」
麺子「え、私もですぅ!おすすめのお店教えてくださいぃ!今度一緒に行きたいですぅ!」
次郎「おー!ラーメン好きか!!ん~、女性ならやっぱりカブジ(ラーメン二郎歌舞伎町店)かな。比較的内装も綺麗だし。個人的にはメグジ(ラーメン二郎目黒店)だけど、女性だと少しハードル高いかな~。ちなみに麺子ちゃんの一押しは何店なの??」
麺子「え!?カブジ?ミタジ?え、それは誰かのあだ名とかですか…??」
次郎「え!え!え!もしかしてラーメン二郎行ったことないの? ラーメン好きなんじゃないの? う~ん、そうなるとやっぱり聖地(ラーメン二郎三田本店)連れてかないとダメだよな~。あ、聖地ってミタジのことね。ん~、でも知り合いのジロリアンに何か言われちゃいそうだな~女性連れだと…」
麺子「(えーーー!まさかのラーメン二郎限定かよ!おすすめの店聞いて二郎の店舗で言うかよ普通!つーか私はAFURIみたいなあっさり系一筋なんだよ!つーかデートで二郎なんて行きたくねえよこの野郎)。…そうなんですねぇ…。じゃあ、今回は遠慮しておきますね…」
このような会話になったら最後、あっさりラーメン派の女子には間違いなく敬遠されてしまうだろう。ラーメン屋は二郎だけでないということを肝に銘じておいてほしい。
◆2.終電を逃した後に
合コンで知り合った麺子と次郎。次郎のジロリアンっぷりにドン引きした麺子だったが、やはり次郎の爽やかな笑顔が忘れられなく、何度かデートを重ね、その後めでたく付き合うことに。そして4回目のデート、ついに終電を逃してしまうのであった…!!
麺子「次郎さん、どんな感じでホテルに誘ってくれるんだろう…。やっぱり外見の通りスマートに誘ってくれるのかな…。(心の声)」
次郎「この後、どうする?」
麺子「…来た!!←(心の声)。ん~なんでもいいよ。明日休みだし…」
次郎「お!明日休み!?じゃあちょうどいいや!」
麺子「…うん。。。(ドキドキ)」
次郎「匂いも気にしなくていいしね!!!」
麺子「え!?」
次郎「とりあえず、カブジ(ラーメン二郎歌舞伎町店)行ってから、どっか泊まろうか!!!」
麺子「(行かねーよ!つーかどこの世界に逢瀬の前にニンニク食うの推奨する奴がいるんだよ!馬鹿かよこいつ!)あ、ごめん…。用事思い出したからタクシーで帰るね…」
性欲をも凌駕する二郎中毒。女性とのデートで終電を逃した時くらい、二郎は我慢しよう。
◆3.某コーヒーショップにて
次郎のジロリアンっぷりに困惑しまくる麺子。だが、やはり次郎のあの爽やかな笑顔に未練たらたら、未だにデートを重ねていた。都内でのショッピングも終わり、この日のデートは終盤、二人は、某人気コーヒーショップで休憩することにした。
麺子「〇〇ラテ、ミルク多めで」
次郎「へ~!ミルク多めなんてできるんだ!初めて知ったよ!(ニヤニヤ)」
麺子「……まさか」
次郎「俺も〇〇ラテ!あ、ミルクマシマシで!!!」
店員「…ハハ(失笑)」
麺子「…私たち、別れましょう」
仏の顔も三度。大切な恋人との別れにまで発展しかねない場違いな「マシマシ」コールはやめておこう。
以上は、筆者の知人ジロリアンが実際にやってしまった3つの失敗を元に創作したシチュエーションである。これを読んでいるジロリアンの皆さん、普通の女子はジロリアンに対する理解がほとんど無いことを、どうか忘れないようにしよう。〈取材・文/日刊SPA!取材班〉