東北電力女川原発(宮城県女川町、宮城県石巻市)を巡り、村井嘉浩宮城県知事は18日、2号機再稼働の前提となる「地元同意」を梶山弘志経済産業相に正式に伝えた。政府の同意要請から8カ月半で、一連の地元手続きが終了した。
東日本大震災の揺れや津波で被災した原発、過酷事故を起こした東京電力福島第1原発と同じ「沸騰水型炉」の地元同意は、ともに全国初。東北電は安全対策工事が完成する2022年度以降の再稼働を目指す。
村井知事は経産省で、再稼働に同意する回答文書を梶山経産相に手渡した。重大事故時の避難道路の整備について、梶山経産相は「(国と地元との)密接な協力が不可欠。継続的な広域避難計画の改善や(避難路となる)道路の整備は知事の意見を聞き、政府として責任を持って進める」と前向きな姿勢を示した。
会談後、村井知事も避難路に言及。「県から要請があれば、優先度を上げるよう国土交通省と調整するとの話があった。県も計画を立て、国と連携したい」と述べた。
回答文書では(1)エネルギー政策の丁寧な説明(2)脱炭素社会の実現など持続可能な政策の提示(3)放射性廃棄物の最終処分地の選定(4)原発の安全対策や緊急時の避難に関する政府全体の取り組み-の4点も要請した。
地元同意の伝達に先立ち、村井知事は県庁で須田善明女川町長、亀山紘石巻市長とともに、樋口康二郎東北電社長と会談。東北電との安全協定に基づき、再稼働に必要な原子炉施設の変更を認める「事前了解」を樋口社長に伝えた。
終了後、須田町長は「(原発を)動かす人を大事にすることが安全文化につながる。避難を含めた防災対策の充実が国や県、町に求められた役割だ」と指摘。亀山市長は「事故を絶対に起こさない信念で、安全性を追求してほしい」と要望した。
東北電は13年12月、知事と立地2市町長に事前了解の協議を申し入れ、原子力規制委員会に女川2号機の新規制基準への適合性審査を申請。今年2月、審査に合格した。
[東北電力女川原発]1号機(出力52万4000キロワット)は1984年6月、2号機(82万5000キロワット)は95年7月、3号機(同)は2002年1月に営業運転を開始した。東日本大震災で3基とも運転停止。1号機は18年10月、廃炉が決定した。2号機は20年2月、基本設計に当たる「原子炉設置変更」が原子力規制委員会の審査に合格し、詳細設計の「工事計画」が審査中。東北電は3号機も今後、再稼働審査を申請する方針。