女性には若いころに特有の甘い香りがあり、それは加齢とともに失われていくことがロート製薬の調査で分かった。
その正体は桃やココナツなどの香りの構成成分であることも判明。その香りをかぐと、見た目の印象も変わるといい、同社は研究結果を製品開発に生かそうと試みている。(安田奈緒美)
35歳は曲がり角
女性が1日着用した1枚の布を目隠ししてかいでみると…。当然、汗の臭い、酸っぱい臭いなどが鼻をつくはず。ところが「その中で甘くて良い香りが漂うのに驚きました」と話すのは、ロート製薬の男性研究員だ。
女性の加齢に伴う体臭の変化について研究しようと、10~50代の女性50人に、入浴後から24時間着用してもらった布を回収し、評価したところ、そこはかと漂う甘い臭いに気づいたという。「甘い臭い」は10代、20代に比べて30代以降で減少し、その「曲がり角」は35歳にあることも分かった。一方で、アンモニア臭や硫黄臭といった、人が苦手に感じる臭いに関しては年代によって大きな差は見られなかったという。
体臭気になる8割
さらに研究グループは甘い臭いの成分の特定にも成功。ピーチのような香りの「ラクトンC10」と、ココナツのような香りの「ラクトンC11」という化合物が香りの元と突き止めた。
男性研究員は「女性の臭いは男性とは違う独特なものがあると以前から思っていた」と話し、それがラクトンだと推察している。
ロート製薬が女性の臭いに注目して調査したのは、平成28年に行ったアンケートがきっかけだ。
300人の20~60代の女性に体臭に関する質問を行ったところ、「年齢とともに体臭が変わってきた気がする」「におっていないか不安」と回答した女性が全体の約8割もいたからだ。
そこで、加齢に伴う体臭の変化について調査を実施。ラクトンC10、ラクトンC11について、昨秋、神戸市内で開かれた「日本味と匂学会」でも発表した。
見た目も変わる
研究結果でもう一つ、分かったことがある。臭いと見た目の印象の関係だ。
実験では「加齢臭」とも称される臭い成分の「ノネナール」と「せっけん香料」「ラクトンC10/ラクトンC11」をそれぞれ含む香料を3つ用意。研究員がそれぞれの香りをかぎながら女性の写真を見て、無香料で写真を見たときの印象と比べた。すると、ラクトンを嗅ぎながら写真を見た方が「女性らしさ」「若々しさ」「魅力度」がそれぞれ、15%、47%、74%も上がった。一方、ノネナールを嗅ぎながら写真を見ると、「女性らしさ」は無香料の時にくらべて40%減、「若々しさ」に至っては60%以上減となった。
これらの研究結果を踏まえて同社広報の矢野絢子さんは「今後、女性の加齢臭に対する手法として、洗うことで落とすだけでなく、ラクトンの香りを加えてあげるというアプローチができる」と話す。すでにラクトンを含むボディウォッシュの販売を開始しており、「順次、ラインアップを増やしていけたら」としている。