人口減少や高齢化で農業の担い手不足が深刻化する中、宮城県や県農業大学校は女性向けのセミナーや習熟度別に知識や技術を身に付ける講座を展開するなど、あの手この手で担い手の確保に奔走している。
名取市内の農地で10日あった農業機械セミナーには、県内の女性15人が参加した。農業従事者や新規就農者、就農希望者などキャリアはさまざま。農機大手クボタ(大阪市)のスタッフからアドバイスを受け、無線操縦式や軽量の草刈り機や小型トラクターの操作に挑戦した。
「草刈り機はエンジンをかける動作や方向転換がスムーズだった。扱いやすい機械があれば、積極的に作業や経営に関わる女性が増えるのでは」。コメや野菜を栽培して20年という仙台市の庄子さおりさん(45)は、手軽な農業機械の登場を歓迎した。
県内では2010~20年に販売農家数は約4割減り、20年の基幹的農業従事者のうち高齢者は約7割に上る。県内の新規就農者は12年以降、年間180人前後で推移するが、女性は約2割にとどまる。
こうした背景を踏まえ、セミナーは農業分野の包括連携協定を7月に結んだ県とクボタが共催した。県農業振興課は「機械や力仕事への苦手意識を克服し、女性もメインの担い手になってほしい」と話し、クボタの担当者も「農機に慣れ親しみ、農業のファンになってほしい」と期待した。
就農を志す若者や脱サラした社会人らを対象に、県農業大学校が1993年度に開設した「ニューファーマーズカレッジ」も、人材育成に一役買っている。
2016~20年度の受講者は計288人で、3割近い76人が就農した。特に「マスタークラス」(定員10人程度)の就農率は約9割に達し、県内でイチゴや長ネギなどを生産している。
マスタークラスの授業は全30回で、各自1棟のパイプハウスを担当する。トマトやキュウリといった園芸作物や花を管理したり、営農計画を作ったりして高度な知識や技能、農業経営全般を学ぶ。
亘理町の大立目(おおだちめ)芙美佳さん(36)は、20年秋ごろまでは食品関連工場に勤める傍ら、花が好きでペチュニアやパンジーを育てていた。「カレッジで勉強し、楽しい日々を過ごしている。花苗や切り花の農家になりたい」と見据える。
阿部義央(よしひさ)さん(22)=仙台市=も「病虫害のリスクがある中で枝豆の種まきや定植に取り組み、無事に収穫を迎えた。農作物を育てる喜びを感じている」と手応えを得た様子だ。
県農業大学校の担当者は「気候や雨、台風などの影響で栽培に失敗するときもある。そうした農業の現実とも向き合いながら、就農に必要な知識や技術を習得してほしい」と望む。