威圧的な指導「仕方ない」2割 名古屋市教委・特別支援学校の教員調査

名古屋市内の特別支援学校の教職員約500人のうち、約2割が生徒指導での威圧的な言動を「仕方がない」と思っていることが判明した。市教育委員会が11日、アンケート結果を発表した。市教委は「人権意識が希薄になっている」として、弁護士など外部の専門家をアドバイザーとして学校に派遣する制度を5月から始める。

 昨年9月、市立天白養護学校の男性教諭(60)=今年3月に定年退職=が高等部3年だった男性の足を蹴るなどした暴行事件が発覚したのを受け、市教委が1月、市立養護学校5校(分校含む)の教職員496人にアンケートをした。

 生徒指導で「威圧的な言動をすることを仕方がないと思うか」の設問に対し、「そう思う」が3%、「どちらかといえばそう思う」が18%だった。市教委は「子どもの特性や情緒の不安定さによる危険行為を抑止するには致し方ないと、教職員が捉えている実態がある」と分析している。

 また、11%に当たる57人が「体罰や不適切な行為(虐待)を実際にしたり、見かけたりしたことがある」と答えた。体罰や虐待の背景についての考えを選択形式(複数回答可)で問うと、「法令を順守する意識が弱い」が32%で最も多く、「特別支援教育の理解や研修の不足」(31%)、「教員の指導力不足」(29%)と続いた。

 養護学校は知的障害や肢体不自由、病弱などの児童生徒が通う学校。ろう学校と盲学校を合わせて特別支援学校と呼ばれる。市教委などによると、特別支援学校に通う子どもは暴力の被害をうまく周囲に伝えられないことが多く、実態が明るみに出にくい。このため一般の学校よりも体罰や虐待が起こりやすい閉鎖的環境になる可能性があるという。

 市教委が派遣する外部の専門家は10人規模で、学校を月2回程度訪問する。授業の見学などを通じて、教職員らが抱える課題の解決につながる助言をする予定だ。市教委は学校の閉鎖的な空間が解消され、体罰などの抑止力になると期待している。

 暴行事件は、元教諭が2017年11月16日に校庭で高等部3年だった男性の足を蹴ったり耳を引っ張ったりした。市教委は元教諭を停職109日の懲戒処分とし、名古屋地裁は先月、罰金30万円の判決を言い渡した。【三上剛輝】

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