兵庫県内の小中高・特別支援学校で2016年度に行われた歯科検診で、虫歯などが見つかり「要受診」とされた約3万5千人のうち、歯科の受診が確認できない児童・生徒が約2万3千人、65%に上ることが県保険医協会の調査で分かった。未治療の虫歯が10本以上あるなど「口腔(こうくう)崩壊」の子どもがいる学校の割合も35%に上った。同協会は「全体的に子どもの虫歯は減少傾向なのに二極化が進んでいる。背景に貧困などの厳しい社会状況がある」と指摘する。(森 信弘)
調査は17年3月、医師や歯科医師らでつくる同協会が初めて実施。県内の1409校を対象に行い、19%に当たる274校(11万415人分)から回答があった。大阪府や長野県などでも各保険医協会が同様の調査を行ったが、似たような傾向があるという。
受診が確認できなかったのは、小学校が46%、中学校で64%、高校は84%と年齢を経て高くなり、特別支援学校は62%だった。
口腔崩壊の児童・生徒がいる場合、家庭状況について尋ねた(複数回答)ところ「一人親家庭」が37%で最も多く、「保護者の健康への理解不足」(33%)、「経済的困難」(32%)などが目立った。口腔崩壊は調査で計346人おり、同協会は「単純計算で県内に1500~2千人程度と推定できる」としている。
口腔崩壊の児童・生徒が1人でもいる学校は、中学では19%だが、高校は47%と増加。中学生は永久歯に生え替わるのに伴って減っているとみられるが、高校生の場合は一生使う歯が使えなくなってしまうことになる。特別支援学校も47%と高く、受け入れる医療機関が限られることも影響しているとみられる。
同協会の足立了平理事は「仕事が忙しく、子どもの歯磨きに気を使ってやれない親もおり、家庭状況にあった保健指導や働き方の改革なども必要」とし「今後も調査を続けたいが、できれば行政が取り組んでほしい」としている。
【口腔(こうくう)崩壊】 明確な定義はないが、10本以上の虫歯や歯根しかないような未処置の歯が何本もあり、食べ物をうまくかめない状態を指す。栄養状態が悪くなり、体の成長やあごの発達などに影響する恐れがある。歯科を受診できない背景として貧困問題との関連からも注目され始めている。