子育て世帯の「夏休みは給食がない」問題 「出勤前の慌ただしい弁当作り」「昼食代を渡してもちゃんと食べない」で疲弊も

全国各地が次々と梅雨明けするなか、子供たちが通う学校は夏休み期間に突入した。コロナ禍による生活の制限もひと段落し、今年の夏は屋外で遊ぶ子供たちの姿を目にする機会も増えるだろう。一方、その親たちは、学期中は学校給食があるおかげで考えずに済んでいた子供の昼食の準備に毎日頭を抱えている。

 例えば学童保育は弁当持参となる場合が多く、働く親たちにとってはその準備が大きな負担となる。自宅で留守番できるような小学校高学年以降は、出勤前に弁当を置いていく場合もあれば、昼食代として現金を渡す場合もあるだろう。学校給食がない長期休みの間は、時間的・金銭的負担が子育て世帯の家計に重くのしかかる現実があるのだ。フリーライターの吉田みく氏が、小学生の子供を持つ母親2人にその辺りの事情を聞いた。

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 小学2年生の子供がいる千葉県在住の会社員・リサさん(仮名、40歳)は、夏休みの学童保育に持たせる子供の弁当作りで早くも疲弊していた。

「出勤前のお弁当作りは本当に疲れます。自分自身の支度もしなくちゃいけないので時間がギリギリに……。余裕のない毎日にうんざりです」(リサさん)

 小学校入学前までは保育園に預けていたため、7月も8月も通常通りに給食が出ており、お弁当を作るのは親子遠足などの行事のみだった。しかし、小学校入学後は、長期休み中に子供を預ける学童保育に弁当を持参させなくてはいけない。

 毎朝5時に起きて子供の弁当を作るというリサさん。自分の支度に30分、通勤には1時間かかるため、慌ただしい毎日を送っている。子供が学童保育に行き渋りだしてしまうと就業時間の8時30分に間に合わない時もあるそうで、その度に部署の仲間たちに謝って回らなければいけないのもストレスになっていると嘆いていた。

「弁当の中身は冷凍食品だらけ……。手作りの卵焼きなどのおかずは余裕がないので作れません。揚げ物ばかりの茶色い弁当を見るたびに、『これでいいのだろうか……』と悩むことも多いです。栄養のことを考えて野菜を入れることもありますが、子供は全部食べ残します。弁当を作ることが、こんなにもメンタルに響くとは思っていませんでした」(同前)

 夫に相談すると、「大変だけど、頑張ってね」とは言うだけで、協力はしてくれないという。リサさんは、「夫婦間で育児の分担をしていけるよう、変えていきたい」と話していた。

昼食代をお菓子に流用する息子たち

 学童保育に通っている家庭だけが昼食事情に頭を悩ませているわけではない。小学6年生と4年生の息子2人を育てる都内在住のパート主婦・ヒロコさん(仮名、38歳)が言う。

「一人で留守番できる年齢になったので学童保育の利用はしていません。長期休み中の食事代として兄弟合わせて1日1000円を渡していますが、どうやらガチャガチャやお菓子代に消えているようなんです……」(ヒロコさん、以下同)

 ヒロコさんが帰宅すると、お菓子の空き袋やガチャガチャの中身が自宅に散乱。毎月のお小遣いは長男は600円、次男は400円しか渡していないので、昼食代を流用してそれらに使っていることはすぐに分かったそうだ。腹が立ったヒロコさんは子供たちに説教したが、そこで意外な言葉が返ってきたという。

「『昼食代を節約して残ったお金くらい自由に使わせてほしい。俺たち、我慢して留守番してるんだよ? それくらい許してよ』と言うんです。とはいえ、子供たちがやっている昼食代の節約とは、自宅にある食べ物を食べてお金を使わないこと。夕食用にと冷蔵庫に残しておいたはずのおかずがなくなっていることはしょっちゅうあります。

 夏休み中は旅行にもなかなか連れて行けず、我慢させてしまっている罪悪感はありますので強くも言えません……。どうしたらいいのか悩んでしまいます」

 時給1100円のヒロコさんにとって、毎日の昼食代に1000円を渡すのは決して安い金額ではないという。弁当を作ることも検討したものの、お金がほしい子供たちからは拒絶されてしまった。普段からスナック菓子や揚げ物ばかりを好んで野菜は食べない子供たちに注意しても、「うるさい」と反抗されて話し合いにならないという。

「生活のために働いているのに、長期休みのたびにこのような形で出費が増えてしまい、頭が痛いです……。今は2人で1000円ですが、年齢が上がるにつれて食事量も増え、金額も上がっていくでしょう。私は何のために働いているのか……。当たり前だと思っていた学校給食ですが、日々助けられていることを実感しました」

 長期休みが来るたびに胃痛がすると明かしたヒロコさん。収入アップのためにも、日払いの派遣アルバイトに登録することも視野に入れているそうだ。

 子供を持つ親の多くが、長期休みの間じゅう、家庭での生活の仕方に頭を抱えている。その中でも、栄養バランス、金銭面、親にかかる負担など、「給食がない夏休みのお昼ご飯」には、いろいろな問題が凝縮されがちなのかもしれない。

【プロフィール】
吉田みく(よしだ・みく)/埼玉県生まれ。大学では貧困や福祉などの社会問題を学び、現在はフリーライターとして人間関係に独自の視点で切り込んでいる。マネーポストWEBにてコラム「誰にだって言い分があります」を連載中。趣味はドライブをしながら道の駅を巡ること。

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