学生限定SNS「ひま部」でなりすまし 未成年の性犯罪被害が多発

「学生限定」と銘打った会員制交流サイト(SNS)「ひま部」を利用して、未成年が犯罪に遭う被害が増えている。昨年、被害者は214人で、兵庫県内でも今年に入り10月末までに10人が性犯罪に遭った。対策が取れず運営会社は年内でのサービス終了を発表。しかし、「なりすまし」で接点を持てるSNSの特性から、警察は「スマートフォンの数だけ犯罪に巻き込まれる恐れがある」とほかのサイトでも注意を促している。

 10月5日、宝塚市の少女(17)に三重県内でみだらな行為をしたとして、同県青少年健全育成条例違反の疑いで住所不定、無職の男(20)が兵庫県警宝塚署に逮捕された(不起訴処分)。同署によると、男はひま部を通じて少女と出会い、無料通信アプリ「LINE(ライン)」でやりとりした後、同県や東京都を連れ回した。

 ひま部は、利用者全体または「中2だけ」「○○好き」などのグループごとに個人の投稿や、不特定多数での通話、メッセージのやりとりができる。利用者数は約800万人。

 登録する肩書は、中高生や大学生、ニートなど。一定の年齢差があると投稿が見られないが、肩書を詐称して登録することもでき、大人が容易に見ず知らずの子どもと接触できる。

 宝塚署の事件では、男は15歳の高校1年になりすまし、少女の「大阪で遊べる人」を求める投稿にコメントした。数回やりとりした後、グループ電話に切り替えてラインのIDを伝え合っていたという。少女は「実際は20歳と聞いて怖くなった」と交番に駆け込んだ。捜査関係者によると、男は別の少女(15)ともひま部を通じて出会い、同様の容疑で警視庁に逮捕されていた。

 ひま部を運営する「nanameue(ナナメウエ)」の石浜嵩博社長は「監視や制限をしているが、ユーザー数が多く抜け穴がある」とし、10月30日に公式ブログで「悪意を持った人たちに悪用され、悲しみを生んでいった」と記し、サービス終了を発表した。

 子どものSNSの利用に詳しい兵庫県立大環境人間学部の竹内和雄准教授(生活指導論)は「『学生限定』だと油断してしまう。実効性のある年齢認証など完全な安全管理システムがない限り、不特定多数の交流サイトは子どもに使わせるべきではない」と指摘している。

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■投稿1日600万回警察監視も限界

 会員制交流サイト(SNS)を介した未成年の犯罪被害はここ5年で急激に増えている。本来、接点のない大人と子どもが直接つながることが犯罪の温床になっているが、大量に投稿され、監視にも限界がある。

 「ひま部」はSNSの被害では、ツイッターに次いで2番目に多い。しかし、同じ性被害でも、ツイッターがきっかけになった事件は、年上の男性と疑似デートをして現金やプレゼントを受け取る「パパ活」での被害がほとんど。一方、ひま部は、大人が未成年になりすまして被害者と距離を縮めて出会うことが多いという。

 警察は被害を防ぐため、サイバーパトロールを強化しているが、ひま部での1日の投稿数は600万回を超え、全てのやりとりを監視できない。兵庫県警少年課の担当者は「顔の見えない相手を信用しないで。自分の恥ずかしい写真を送るなど、相手に弱みを握られないよう気を付けてほしい」と訴える。

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